川島永嗣、小野裕二が感じた来季への課題=スタンダールはEL出場権を獲得

中田徹

日本人GKとして初の欧州カップ戦出場

EL出場を決め、レドニック監督(右)と喜ぶ川島。日本人GKとして初の欧州カップ戦に臨む 【写真:Image Globe/アフロ】

 川島永嗣は、日本人GKとして初のヨーロッパカップ戦に出場する権利を得た。
「僕は(4−0だった)前半を終わってもロッカールームの中で『絶対、気を抜くな』と言っていた。自分たちがやられたブルージュ戦(2−4)のようにね、相手が勢いに乗れば何が起こるか分からない。だから90分間、自分としては最後まで(集中を)切らさないように、ゼロに抑えようと考えてました」

 これで川島のクリーンシートは今季18回(レギュラーシーズン13回、プレーオフ5回)となった。記録を見る限り、素晴らしいシーズンを川島は送った。しかし、ビッグクラブのGKは難しい。敗戦に直結するミスを犯すと、ものすごい批判を四方から浴びてしまう。

 顔見知りのスタンダールのサポーターが「川島は良いシーズンを過ごしているけれど、我々はもっと彼に期待していた。彼の活躍でチームが勝利をつかむ回数が少な過ぎる。また、ロケレン戦(1−4)では開始早々にミスから失点し、チームにフラストレーションを与えてしまった」というメールを送って来た直後、5月12日のクラブ・ブルージュ戦だった。チームは2−4と完敗した。ベルギーの新聞は2ページを割いて「決してのこの日の4ゴールは川島に責があるわけではないが、あまりに最近、失点が多過ぎる。サポーターは控えGKの(アンソニー・)モリスを推している」と川島を批判した。

 それから2試合、川島はベンチから外れ、ヘンク戦(1−1)とロケレン戦(4−3)はモリスがスタンダールのゴールを守った。レドニック監督は、「川島がうちのベストキーパーであることに変わりはないが、ブルージュ戦の彼は悪かった。ヘンク戦の重要性はチームにとってそれほど高くないから、今回はモリスにチャンスを与えた。最後のプレーオフ(対ヘント)に、川島を使うかモリスを使うかは、ロケレン戦後に決める。川島にとっても競争があるのは良いこと」とコメントした。

 結局、レドニック監督はヘントとの2試合を川島に託した。

川島「またひとつ前に進めた」

「今シーズン、自分たちが負けた試合や失点で、自分が批判されたことはあった。この前、(モリスに)代えられる前もそうだった。ただ、自分としてはやっぱりそういうのを乗り越えていかないと意味がない。逆に言えば、それは自分が求めているもの。何と言われようと自分自身が良いパフォーマンスで見返せるかというのが、非常に大事になってくる。海外でやっている以上、自分が日本人のGKを背負っている部分もある。いくら誰に何と言われようと自分はやっぱり最高のパフォーマンスを出したいと常に思っている。そういう意味でもこの2試合は大事だったのかなと思います」

“この2試合”も大事だったが、休んだ2試合もそれなりに意味があったはずだ。その間、川島はブログにこうつづっている。

“新しい経験は時にいいものもあるし、自分が望んでいないものも時にはあります。でもどんな時も自分が心の底の底から何を望んでいるのか、それと真っ直ぐ向き合っていかなければいけません。”

「こっちに来てから3年間、ずっとやり続けてきて、良い意味で少し息を吸ってもう一度リスタートするという意味では良い時間だったと思う。また、このまま代表に行くのに休日もないので、気持ち的にリフレッシュできた」

 リールス時代は0−7で敗れたこともあるが、スタンダールではヘント戦のように7−0で勝つこともある。スタンダールにステップアップしたこの1年を川島はこう振り返る。

「同じベルギーのリーグでも、前のチームとは全然違う経験だったと思う。スタンダールでは求められるものはそれだけ高くなる。また一歩、自分がレベルアップするという意味では、本当に良い1年だったかなと思う。自分でも満足できない時期があったけど、そういうのも含めて新しい経験ができたと思う。今回、EL出場権を取ることができて、来季はベルギーの舞台だけじゃなくて、ヨーロッパの中でどういうことができるのかが重要になってくる。自分としては大きなステップじゃなくても、1年でまたひとつ前に進めたのかなと思います」

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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