川島永嗣、小野裕二が感じた来季への課題=スタンダールはEL出場権を獲得
女子のベネリーグは成功するのか
ベルギー1年目のシーズンを終えた小野(赤)。「もっと体力をつけないといけない」とフィジカル面の差を感じた 【写真:Image Globe/アフロ】
ベネリーグは、今季から発足したベルギーとオランダによる“国境をまたいだ国内リーグ”だ。男子の世界では1990年代後半、オランダ、ベルギー、ポルトガル、スコットランド、スカンジナビア半島のビッグクラブによるアトランティックリーグ案、2000年代半ばのベネリーグ案が生まれたが、実現しなかった。スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの3国は2004−05シーズンから3年間、ロイヤルリーグという名の国際リーグを開いたが、それとは別に彼らは独自のリーグを維持していた。
こうした“国境をまたいだ国内リーグ”創設の目論みは競技のレベルアップと、マーケティング力拡大にある。しかし、サッカーというスポーツは著しくインターナショナルなスポーツである一方、究極のドメスティックなスポーツという面も持つ。サッカーはワールドカップという世界最大の祭典を持つが、日々、我々は国内リーグ、あるいは地域リーグの戦いに一喜一憂を繰り返しているのである。何も隣国と手を組まなくても良いではないか――という結論の結果、“国境をまたいだ国内リーグ”案はご破算になってしまうのは当然のことなのである。
しかし、まだ普及度の低い女子サッカーにおいてベネリーグは実現し、UEFA(欧州サッカー連盟)もこれを認めた。優勝チームのトゥエンテはもちろんのこと、2位ながらベルギーの最上位チームのスタンダールにもCL出場権がしっかり与えられたのだ。
昨年秋、スタンダールのローランド・ドゥシャテレ会長が「このままの競技力、人気ではベルギーのスタジアムは閑散としてしまうだろう。オランダとベルギーは男子でもベネリーグを作らねばならない。さもなければスタンダールはフランスリーグに加わる」と発言し、「その話は7〜8年前に終わっただろ」ということでほとんど無視されてしまった。しかし、イングランド、スペイン、イタリア、ドイツの4大リーグと、それ以外のリーグの資金力、実力差は著しく開いている中、UEFAのミシェル・プラティニ会長も“国境をまたいだ国内リーグ”に大きな関心を抱いていると言われる。女子のベネリーグが成功するか、否か。それは将来、男子でも同じことが起こるかどうかの実験でもある。
今季最終戦で若手の才能が爆発
昨年10月、ロン・ヤンス監督が解任され、ミルチェア・レドニック新監督が就任したとき、スタンダールは10位だった。それが、とうとうヨーロッパ行きの切符を手に入れたのである。フォーメーションは4−4−2ながら、選手の特質を見ていくと4−2−4と呼べる攻撃的な布陣。しかし、レドニック監督は全員が守備に参加することを要求し、規律に優れたチームを築いた。ミヒー・バチュアイ(19歳)、イモー・エゼキエル(19歳)、ジョゼ・ムポク(21歳)、フレデリック・ビュロー(22歳)といったタレントたちの献身ぶりを見ていると、もしかして自分は今、彼らの歴史の始まりを目撃しているのでは……と思うことも時々あった。今季最終戦となったヘント戦は彼らの才能がひとつとなって爆発し、思わぬ大差をつけての勝利となったのだ。
小野「もっと体力をつけないと」
「今回のように、自分に力が入っている状況で当たれば問題ないんですけど、自分の体勢が悪い時に、バランスを崩している時に当たられると倒れしまう場面もあった。来季はそこをもっと改善していきたい」
昨年末、横浜F・マリノスの一員として天皇杯準決勝を戦ってから、小野はスタンダールに電撃移籍をし、休む間もなくベルギーリーグの舞台に立った。1月25日のコルトライク戦で途中出場を果たした小野は、ファンとメディアからも高い評価を受ける上々のデビューぶりだったが、続くアンデルレヒト戦ではトップチームのパワーの前に何もできなかった。その後はけがもあり、出場機会がほとんどなくなった。
「最初、ベルギーに来ていきなり試合に出た。しかしコンディションが上がらなかった。こっちのサッカーに慣れるのもすごく難しかった。日本と違ってベルギーはカウンターからカウンター。日本の細かい動きと違って、こっちの動きはダイナミック。縦に縦にというダッシュの回数も違う。そういう面ではもっと体力をつけないといけない」
しかし、終盤3試合連続出場を果たしたことで、ヘント戦ではキレのある動きが戻った。
「やっぱり試合勘という部分でね。練習試合と公式戦では違うし、公式戦でも15分、20分というのを連続で出るより、ちょっと長い時間出た方が選手としては感覚をつかめる。ここ3試合、監督がしっかり使ってくれたんで、最後しっかり勝ててよかった」