快進撃の松平健太、覚醒した天賦の才=世界卓球

月刊『卓球王国』

リベンジも達成 強豪を次々と撃破

強豪を次々倒し、ベスト8に勝ち進んだ松平健太。真の天才が、覚醒した 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 世界卓球選手権パリ大会(個人戦)の男子シングルスで、2008年北京五輪金メダリストの馬琳(中国/世界ランキング8位)、元世界ランク1位でヨーロッパ選手権3回優勝のブラディミル・サムソノフ(ベラルーシ/世界ランキング11位)という世界のトップランカーを破り、ベスト8に進出した松平健太(早大/世界ランキング58位)。

 馬琳は09年世界選手権(横浜)で対戦し、あと一歩まで追い詰めながらゲームオールの9−11で敗れた相手。今回は4−1での快勝だった。コースの読みにくいレシーブで、馬琳に十分な体勢で3球目攻撃をさせず、逆に強烈なカウンターで打ち抜く。フォアへ飛びつきざまに打ち返す、相手フォアストレートへのカウンタードライブ、ラケットをワイパーのように横へ振り抜く横回転バックブロックなど、持てるテクニックを余すところなく披露した。
 「ドローが決まって、1回勝てば2回戦で馬琳と当たるので、リベンジしたいと思っていた。その気持ちがプレーにつながった。思った以上に体が動いたし、頭もすごく働きました」。松平は試合後、笑顔でそう語った。

 4回戦のサムソノフ戦は、一進一退の攻防。サムソノフの鉄壁のブロックと中陣でのしのぎに対し、正確なフォアドライブの連打、さらに台から離されたところから一発のバックドライブで盛り返すなど、素晴らしいプレーを見せた。試合後には、「ぼくは動かすタイプなのに、動かされて疲れました。3回戦までは全然汗をかかなかったのに、初めて汗が出ましたね」という、取材陣を驚嘆させるコメントを残した。

 日本男子では34年ぶりとなる、男子シングルスでのメダル獲得を目指した準々決勝では、現世界ランキング1位の許シン(中国)とも熱戦を展開。フォアハンドのブロックで小さく止めたかと思えば、回転を加えたバックブロックで許シンを詰まらせ、チャンスボールをパワードライブで打ち抜く。世界1位を前後左右に走らせ、手玉に取る抜群のボールタッチに、パリ・ベルシースポーツホールの大観衆は大きな拍手を送った。
 松平のベンチに入った日本男子チームの倉嶋洋介監督は「健太は非常に高い意識で練習していたし、半年くらい前から、いつ結果を残してもおかしくないと思っていた。まさかこの大舞台で爆発するとは思っていなかった」と、松平の活躍にうれしい驚きを隠せなかった。

豊富な練習量、フィジカルの強化が結実

準々決勝では世界1位の許シン(左)に肉薄。メダルまであと一歩に迫った 【写真は共同】

 大会前は兄・賢二、妹・志穂と兄妹3人そろって代表入りしたことが注目されていたが、大会本番では堂々とその実力を証明してみせた。
 今回の世界選手権で松平が「爆発」した理由は、豊富な練習量に加え、体力トレーニングに積極的に取り組み、フィジカルの能力が飛躍的に向上したことが大きい。今年2月のジャパントップ12での優勝会見では「体力トレーニングで体重が3キロくらい増えた。もっとトレーニングをやって、あと3〜4キロ増やしたい」と語っている。

 そして、2月末からの2回にわたる男子ナショナルチームの長期合宿で、松平のフィジカルはさらに高められた。もともと、低くしゃがみ込みながら出す「しゃがみ込みサービス」を使うことで、下半身の筋力は強かったが、ジャンプ系のトレーニングなどでさらに鍛え上げた。日本男子チームが積極的に取り入れている体幹トレーニングで、体幹の筋力も高めた。大きく動かされても体の軸がブレなくなり、よりパワフルになった両ハンドドライブを、連続で打てるようになったのだ。

 ジュニア時代から将来を嘱望され、06年に行われた世界ジュニア選手権で日本人選手として初めて優勝。世界の卓球関係者から注目を集めた松平。あふれる才能をおさめるだけの「器」ができ、才能をフルに発揮できるようになってきた。
 それでは、その才能、強さの秘密は、一体どこにあるのか。

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