バイエルンが予感させる黄金時代の到来=バルサテイストの融合がもたらす変化とは
ゴールへ近づくための遠回り
来季からバイエルンの指揮を執るグアルディオラ氏は、今のバイエルンサッカーにどのような変化をもたらすのだろうか 【Getty Images】
通常、選手はスペースに入り込み、ボールを受けることを求められる。スペースとは選手と選手の間に生まれるもの。しかし、置物ではない相手選手が密集するエリアで、ただパスを通そうとしても、相手に簡単に読まれてしまう。正確なパス技術はもちろんのこと、パスを出す前の諸動作で相手選手が足を出せないタイミングを作り出す駆け引きのうまさが必要だ。
そもそも攻撃において、ゴールへの近道は中央突破だ。それを相手も理解しているから、中央の守備は固められる。そこで比較的スペースのあるサイドに展開して、起点を作ろうとするが、それはあくまでも相手の中央の守備を揺さぶるための起点である。単純にサイドに展開し、そこからのクロスだけでは、組織された相手守備を崩すことは難しい。だからこそ、サイドで優位な状況を作り、相手の意識をそこへ向かわせ、本来守らなければならない中央への集中力を削がせる。それが狙いだ。そのためにはパス交換の距離と方向、スピードを変えていくことが重要になる。短いパスをつないだら、大きくサイドチェンジ。ゆっくりとしたリズムから、急激なテンポアップで縦パスを入れる。外、中、外とエリアを代えながらパスをつなぐ。そして選手が連動して動き、相手DFを引きつけて味方のためにスペースを使い、そのスペースにタイミングよく入り込んで、ボールを受けることが求められる。
適応できる選手できない選手
リベリー、ロッベン、クロースの3人は以前に比べるとオフ・ザ・ボールの質は上がったが、自分の勝負したいエリアに固執することがまだ多い。ビルドアップの局面でも仕掛けの意識が強すぎるリベリーとロッベンは、簡単にパスをはたくよりも単独突破を選択しがちなので、チームとしての仕掛けのリズムを壊すことがある。
ボールを失ったあとのプレッシングも無謀なタイミングで当たることが多いクロースに関しては、プレスに入るタイミングとスピードが遅いというのがマイナスポイントだ。逆にゲッツェやシェルダン・シャキリといった選手は問題なくフィットするだろう。
センターバックにはドルトムントのマッツ・フンメルスクラスがほしいところだ。またバイエルンはドルトムントのロベルト・レバンドフスキ獲得も間近と言われているが、高さがありスペースの作り方もうまいレバンドフスキの加入はマンジュキッチとはまた別のバリエーションをチームに与えることになる。バルセロナの時とは抱えている選手が異なる以上、全く同じようなサッカーにはならないだろう。
しかし、CLで強さを見せつけているバイエルンもまた、グアルディオラの手によってバルセロナテイストが加えられて変化していく。バルセロナテイストとの融合を果たしたバイエルンサッカーが、どのようにヨーロッパのサッカーシーンに影響を与えていくのか。来季1番の見所といえるのではないだろうか。
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