ACL日韓戦で韓国勢が勝ち越した理由=Jに足りない国際経験とメンタリティー

キム・ミョンウ

メンタル面での優位が勝利を引き寄せる

昨季の経験から負けなしでグループ首位に立つ柏 【写真は共同】

 1つの事実としてよく取り上げられるのが、ACLで2007年に浦和、08年にガンバ大阪が優勝を果たした後の、Jクラブの低迷についてだ。09年以降、Jリーグ勢は一度も決勝に進出していない。一方で、韓国勢の台頭が著しく、12年まで4年連続して決勝に進出し、そのうち優勝が3回(09年浦項、10年城南一和、12年蔚山現代)の成績を残している。

 こうした事実を韓国はどう受け止めているのだろうか。柏戦の取材に来ていた『イルガンスポーツ』のソン・ジフン記者は「ACLでの韓国は日本よりも上手だという意識が強いですよ」と語る。

「やはり09年から4年連続で決勝に進出したことで、『日本には勝てる』という気持ちを持っている選手が多いのだと感じます。メンタル面で優位に立つことで、勝利を引き寄せる。各クラブの目標設定がリーグ優勝のみならず、ACLのタイトルを獲得するという意識が高まったことも大きな力になっていると思います」
 
 さらに、ソン記者が続ける。
「日本サッカー協会(JFA)とJリーグが打ち出した、ACLグループリーグから決勝トーナメント1回戦までのアウエーでの渡航費を8割補助し、JFAも強化費を支給し、アウエーの全試合に職員を派遣するなど情報収集も強化するという支援には驚きました。
 KリーグはACL出場チームに対して、過密スケジュールを緩和する対策(ACLアウエー戦前のリーグ戦は必ずホームで試合を行う)を立てているくらいですから、条件的には韓国の方がしんどいと思います。それでも韓国が土壇場で力を発揮するのは、メンタル面の強さなのかもしれません」

 確かに、両国リーグのスケジュールについては、日本と韓国ともにシーズン開幕から終了までの時期がほぼ同じことから(Jリーグ:全34節、Kリーグ・クラシック:1チーム全38試合)、条件的にさほど変わりはない。

過密日程は言い訳にならない

 そうした結果は、一発勝負であるラウンド16(編注:今季からホーム&アウエー方式が採用されている)の結果を見ても明らかだ。09年以降のACLラウンド16に限れば、Jクラブは過去4年の日韓戦で1勝6敗と大きく負け越している。昨年は柏レイソルが蔚山現代に2−3で競り負けている。

 水原三星のクラブ関係者も「やはり大事な試合で勝つという意識は韓国人の方が高いでしょう。幼いころから、勝負どころでの戦い方を知っているので、一発勝負なら有利なのは間違いありません。例えば、シンプルにロングボールで攻めて、日本人選手を跳ね返すといった個の強さで勝負するという戦い方もできるわけです」と言う。
 
 一方、あるJリーグチーム関係者はこう語る。
「今回の韓国チームとの結果を見ても、決してJリーグが弱いのではないと思います。ロングボールに対する守備やフィジカルコンタクトを避ける選手もいると感じます。個が弱いわけではないのですが、やり慣れないシーンに遭遇したり、当たりの強い選手が出てくれば少しずつ腰が引けてくる選手がいたりします。チームに国際経験豊富な選手がいれば、チームの意識も大きく変わってくると思います」

 このJ関係者の言葉を借りるならば、ACLに2年連続出場の柏レイソルには経験者が大勢いる。その結果、現在グループHで勝ち点10の1位に立ち、16強入りをほぼ手中に収めた状況だ。

 ACL出場チームへのJFAやJリーグからの支援を考えた場合、韓国やその他の国と比べるとかなり恵まれているかもしれない。それを生かすも殺すも、最終的にはクラブ側にある。リーグ戦の日程が過密だからという話は、言い訳にしかならないと思うのは自分だけだろうか。

 Jリーグのレベルを考えるならば、優勝は当然期待してもいいと思う。最近のJリーグは実力が均衡しており、09年以降だけ見ると毎年優勝チームが変わっている。これはJリーグのレベルが上がっていると肯定的にとらえられるが、初めてACLを経験するチームは、コンディション調整や戦い方の難しさを感じ、そこで弱さを露呈してしまっているように思う。

 ACLを制覇した浦和やG大阪の当時の躍進は、韓国でも大きな注目を浴びていたし、経験と自信が両クラブにはあったように感じる。韓国の記者が「最後は精神面の強さが勝負を左右する」と語っていたように、今のJクラブに必要なものはACLのような国際舞台で戦う経験とメンタリティーなのかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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