「松坂超え」なるか? ダルビッシュ2年目への期待=米予測サイトは「勝ち星微減」その理由は?

菊田康彦

チーム打線弱化も「進化」したダルビッシュならば

昨シーズン終盤からの「進化」を考えれば、日本人最多18勝を上回ることも絵空事ではない 【Getty Images】

 ダルビッシュの所属するレンジャーズは、昨シーズンはア・リーグ2位のチーム打率2割7分3厘、同1位の808得点と、リーグ屈指の強打を誇った。ところがこのオフ、43本塁打、128打点のジョシュ・ハミルトン(10年リーグMVP、現エンゼルス)、24本塁打のマイク・ナポリ(現レッドソックス)、打率3割7回のマイケル・ヤング(05年首位打者、現フィリーズ)といった主軸打者が流出。代わりにメジャー通算360本塁打のランス・バークマン(前カージナルス)、昨季27本塁打のA.J.ピアジンスキー(前ホワイトソックス)らを加えたが、得点力ダウンは必至と見られている。昨年のダルビッシュは1試合平均で5点強の援護を得ていたが、今年はそこまで打線に期待できないということで、勝利数は増えないとの予想になっているのだろう。

 だが、それはダルビッシュが昨年のダルビッシュのままであれば、の話だ。昨年のダルビッシュは初めて経験するメジャーのマウンドやボールの違いに戸惑い、たびたびフォームを修正するなどの試行錯誤を繰り返しながらも、シーズン終盤には確実に「進化」した姿を見せていた。数字的には、8月6日のレッドソックス戦まで11勝8敗、防御率4.57だったのに対し、8月12日のタイガース戦以降は先発8試合で5勝1敗、防御率2.35。「もう四球は気にしなくていい」というマイク・マダックス投手コーチのアドバイスが転機になったとも言われているが、それまでリーグ平均を下回る2.08だったK/BB(奪三振と与四球の比率)は、この終盤8試合では4.47まで跳ね上がるなど、制球に関する不安も消え去っていた。

日本人最多「18勝」超え、絵空事ではない

 ダルビッシュはこの春のオープン戦では、首の張りによる先発回避はあったものの、先発4試合で1勝1敗、防御率1.98、与四球3、奪三振15と順調な調整ぶりを見せている。5回2失点、1四球、5奪三振で勝利投手になった3月23日(現地時間)のレッズ戦では「いつ開幕しても大丈夫」と話したとも伝えられている。これまでメジャー1年目に2ケタ勝利を挙げた日本人投手は野茂英雄(95年ドジャース=13勝)、石井一久(02年ドジャース=14勝)、松坂大輔(07年レッドソックス=15勝)、そしてダルビッシュの4人。このうち野茂は2年目に16勝(1年目はストの影響でシーズン短縮)、松坂は18勝と勝ち星を増やしており、この松坂の18勝がメジャーにおける日本人投手の年間最多勝記録になっている。

 ダルビッシュ自身は常々「勝ち星は運もある」と話すなど、勝利数にはこだわりを見せていない。また、メジャー2年目を迎え、ライバルとなる他球団も対策を練ってくるだけに、勝ち星を増やすのは容易なことではない。前述のとおり、現地の各種媒体もこと勝ち星に関してはシビアな見方を示している。それでも今季のダルビッシュに「松坂超え」を期待するファンは、決して少なくないはずだ。昨季終盤からこの春にかけてのパフォーマンスや、その対応力の高さを考えると、それはあながち絵空事とは思えない。

<了>

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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