ソチ五輪へ、あらためて考える「質」の大切さ 真央、ヨナ、コストナーが持つ高い基礎力

野口美恵

飛躍の可能性秘めたロシア勢

母国開催の五輪を控えたソトニコワは9位。ロシアは五輪2枠獲得 【坂本清】

 ソチ五輪2枠を獲得したロシアは、アデリナ・ソトニコワとエリザベータ・トゥクタミシェワが9、10位。世界ジュニア(2011年)の金銀を独占した時期に比べれば、ジャンプに苦戦している。しかし五輪開催国として、またフィギュアスケート王国として、メダルは至上命題だ。ソトニコワは今季はブルースなど表現の難しい曲にトライしたことも得点が伸びなかった一因にあり、選曲次第で飛躍の可能性が大きい。「来季は自分が何をするべきかよく考え、集中して演技したい」と話す。

 トゥクタミシェワは「3回転+3回転」の能力は落ちておらず、ピーキング次第で表彰台まで駆け上がる才能がある。「今回は五輪3枠を確保しようと考え、緊張してミスがありました。しかしフリーの演技には満足です」という。

 また今季途中からけがで休場していたユリア・リプニツカヤ(ロシア)も世界ジュニアで復帰。ダブルアクセル+3回転を確実に成功し、驚異の柔軟性も健在だった。試合勘が鈍ったのか多少のミスはあったが、シニアデビューとなった今季の中国杯2位、フランス杯3位となった才能は、決して衰えていない。

まず基礎力 ジャンプ以外に勝負の鍵

世界フィギュアで基礎力の高さを見せつけた浅田(右)、キム・ヨナ(中央)、コストナー 【坂本清】

 いずれにしても世界選手権ではっきりとしたのは、ジャンプが成功しさえすれば勝つわけではないということ。それぞれの技の質を評価する出来栄え(GOE)と、基礎スケート力や演技を評価する演技構成点(PCS)が、最終的なスコアを左右した。結局は、基礎力がものを言うということだろう。

 若手はこのままジャンプをいくら成功させても、表彰台の一角を崩すのは難しく、基礎力の充実が必要になる。また表彰台の3人は、ジャンプのミスを減らすことも大切だが、PCSでの優位を保つためにもやはりスケートそのものを磨き続けなければならない。

 来季はメディアの側も、ジャンプの成功の可否ばかりに注目せず、大技ではない部分に隠れている選手の努力と実力をしっかりと捉えていくことが、大切なシーズンになるだろう。

<了>

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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