香川移籍でより進化遂げたドルトムント=すでに乾ききった不在を嘆く涙
欧州の舞台でも次第に存在感を発揮
香川の代役としてドルトムントに加入したロイス(右)。チームをさらなる高みに導く存在だ 【Bongarts/Getty Images】
マラガは、準決勝を戦うにあたり最も楽な相手だったが、そのようなことを口にする人間はクラブにはいない。クロップは「われわれはスペインのクラブのクオリティーは承知している」と話した。キャプテンのセバスティアン・ケールも「僕らは間違いを犯しはしない。相手を過小評価することなどないんだよ」と強調した。
下馬評では、ドルトムントが準決勝進出に近いとされている。このチームが11年のヨーロッパリーグ、翌年のCLでグループステージを勝ち抜けなかったとは、今では信じがたいことだ。選手のローテーションはあるが、この数年チームの核は変わらないまま、今では国際的にも輝きを放つに至った。ケビン・グロスクロイツはもはや先発ではなく、帰ってきたヌリ・シャヒンも自身の序列を上げる必要がある。
この数週間、チームはロイスやマリオ・ゲッツェといった代表選手に休息を与える余裕を見せながらも、先発には強力な選手を並べることができている。ドルトムントは経験を増し、欧州の舞台での2年間の厳しいレッスンが、ようやく花開いたのだ。
香川退団後に遂げた目覚ましい進歩
香川が担っていた、守から攻への切り替えにおいての素早い連係、中盤でのボール確保といった役割は、複数の選手によってシェアされるようになった。特に創造性あるイルカイ・ギュンドアンは、このチャレンジに伴い大きく力を伸ばしている。香川の後継者であるロイスは、前任者と同じだけの距離を走りつつ、ストライカーのロベルト・レバンドフスキの近くにポジショニングすることに、より重きを置いている。ロイスは中央でのプレーや攻撃だけに縛らされることなく、ドルトムントはより流麗にサイドチェンジを敢行し、攻撃のラインを変えていく。
ゲッツェは中央を基本の位置としてきたが、新しいドルトムントでは彼やロイス、ヤクブ・ブワシュチコフスキ、さらにはゴールゲッターのレバンドフスキといった選手が、頻繁にポジションチェンジを行う。ロイスは香川と比べ、華麗さで肩を並べつつ、オープンスペースを使う能力では上回る。だからこそハノーファー戦でのレバンドフスキは、トップ下で先発しながらも2点を奪うことができたのだ。
イングランドのクラブに対抗してバイエルンも手を挙げるなど、レバンドフスキ退団のうわさは日々信ぴょう性を増している。だからこそ、ドルトムントはバルセロナのような「偽背番号9」の採用を増やしているのだ。特にボルシアMG戦で、クロップはそのスタイルにこだわった。ゲッツェはセンターFWに据えられたが、頻繁に中盤に顔を出し続けた。中盤を1人増やすことにより、パスの選択肢を増やしたのだ。
香川が去った翌シーズンに、ドルトムントはランニングの激しさ、アグレッシブなプレス、コンパクトな守備、素早い攻守の切り替えという点において、目覚ましい進歩を遂げている。香川を懐かしむことはない。とはいっても、彼という人間を、という意味ではない。ドルトムントと香川のつながりが失われたわけではなく、マンチェスター・ユナイテッドとともにCLの舞台から姿を消した香川は、準々決勝では古巣の勝利を祈ることだろう。
香川を恋しがって、ドルトムントが涙を流すことはもうないのだ。
<了>
(翻訳:杉山孝)