木村沙織、物足りないバレー欧州制覇=海外プレー経験が物語った佐野との差

田中夕子

佐野は出場4試合ながらベストレシーバーに輝く

ファイナル4で対戦した佐野(右)との写真撮影に応じる木村。佐野との活躍の差は海外での経験値によるものが大きい 【写真は共同】

 トルコの地で出場機会になかなか恵まれていない木村に対して、佐野は外国人枠のないチャンピオンズリーグのみに出場する契約を結んでいる。これはトルコリーグでは、試合での外国人登録枠が3人までとされるためである。

 ヨーロッパの選手たちが「この舞台に立てるだけでも誇りに思う」というチャンピオンズリーグのファイナル4で、なおかつにイタリアのエレオノーラ・ロビアンコ、シモーナ・ジョーリらワクフバンク同様世界のトップがそろうガラタサライでポジションを確保。チャンピオンズリーグのみの契約のため、出場はこれが4試合目だが、ディグやフォローなど安定したレシーブ力で存在感を示した。

「やっていることは日本にいる時と同じだし、自分のペースも変わらない。でもとにかく個性が強いので、コミュニケーションの面では(日本と)全然違います」

 佐野が海外でプレーするのは、フランス、アゼルバイジャンに続いてこれが3カ国目。フランスのRCカンヌ在籍時にもチャンピオンズリーグのファイナルに出場し、準優勝の経験も持つ。ヤママイ・ブスト・アルシーツィオ(イタリア)との3位決定戦に敗れ、4位に終わった今回のチャンピオンズリーグでも、わずか4試合の出場ながらベストレシーバーを獲得した。

「カンヌにいたころは若かったから、自分のプレーができず、苦い経験しかありません。でもそれがあったから、ここまで成長できたのかもしれない。今回その経験を生かせなかったことは残念ですが、自分の中ではこのクラブに来て良かったし、スッキリしています」
 
 日本では不動のエースであった木村が、世界最高峰のトルコリーグでは試合に出ることすらままならない現状にある。代表チームや東レと同様の活躍を期待する目線で見ると、荒木絵里香(東レ)が ベルガモ(イタリア)時代に優勝して以来の欧州制覇の快挙も、物足りなく映るかもしれない。しかし、まだ移籍後1年目のシーズンでもある。

「自分が海外に出るなんて思いもしなかった。全部良い経験になっているし、チャンピオンズリーグで対戦するお互いのチームに日本人がいる状況も、すごく良いこと。どんな役割でも、今はチームのために頑張ります」

 佐野が海外のチームを渡り歩いた経験によって今のプレーができているように、木村にとってもこの経験がきっと大きな強さに変わる時が来るはず。

<了>

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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