日本ラグビーを強くする外国人選手+α=ラグビー日本選手権総括

向風見也

チームへの献身という当たり前をこなす

 もっとも、世界的名士の存在だけで勝てるほど極東の勝負は甘くない。大物の移籍が常態化してきた昨今ならばなおさらである。いい選手の獲得を好結果につなげるには、別なプラスアルファ(+α)が必要なのだ。

 具体的には何か。優勝したサントリーの関係者は証言する。

「規律じゃないですか。例えば、ある大物外国人が某国内クラブに入って、好き勝手をして帰国した。うちはそんなことはさせない。逆に、ジョージもフーリーもうちでなければ果たして同じようにやっていたか」

 オーストラリア代表も、南アフリカ代表も、ニュージーランド代表も人間なのだ。プロとして報酬分の働きをするための体調管理はいつでも欠かさないだろうが、チームにコミットするかどうかは、その部の雰囲気に左右されても不思議ではない。

 そんな中、ジョーンズ前監督は、クラブハウスの共用スペースでの携帯電話の使用を禁止とした。部員を少人数のグループに分け、それぞれにロッカールームの掃除などを当番で行わせたりもした。ボールを持たないときの献身的な動きが求められる「アグレッシブ・アタッキング」を貫くために、選手同士で「チーム第一」の思いを確認し合える雰囲気を作ったのである。確固たる文化と短時間ながら強度の強い練習を継承する今の大久保直弥監督は、控えめながらも「チーム、チーム」と語る。

「世界のトップ選手が、チームのために何をしなきゃいけないかを考えている。スタッフ、選手にチームのために、という気持ちがあるかどうか。ここが、2年前に一番変わったことです」

 あらためて、好選手がそろう集団がただのショーケースにならない理由は――。エース格の小野澤はこう答えるのだった。

「態度。(試合に向けて)準備をするのも態度だし、1個1個のフェーズ(局面)に自分がどうアプローチするかも結局、態度。(チームの)形を保つためにどれだけ献身的でいられるか。それだけですね」

 言うは易し行うは難しである「当たり前」の所作を、さも「当たり前」にこなす。そんなスター集団が、来季も国内リーグを先導するか。

<了>

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著者プロフィール

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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