背水の陣で挑んだアローナ戦=“格闘技の聖地”とヴァンダレイ・シウバ

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20分の死闘は判定決着へ――

シウバは2005年大晦日、さいたまスーパーアリーナでPRIDEミドル級のベルトを賭けたヒカルド・アローナとのリベンジマッチに勝利し、人気を不動のものにした 【スポーツナビ】

 1R10分、2R5分の合計15分を戦った両者は、ともに息が荒い。だが果敢に前に出てローを放つ王者。飛び込んでジャブから左フック。下がってかわすアローナ。腰を落とし「タックルに行くぞ」とフェイントをかけるアローナ。王者も腰を落として対応。
そこから王者が素早いジャブ。かわしてジャブを出す挑戦者に、王者はワンツー。紙一重でかわすアローナ。 強引に飛び込んで組みつこうとするアローナに、王者の右がヒット。離れてから右を振るいながら飛び込むアローナ。両者のパンチが交錯する。

じりじりと前に出る王者に、アローナはインロー。フェイントを出しながらチャンスを伺う両者。ワンツーで飛びこむ王者に、組みついたアローナは脚をかけてテイクダウン! そしてサイドを取ることに成功した。王者は右手でアローナの腰を押さえて真横に来させないようにし、ヒザ蹴りを封じる。だがその分、顔面がガラ空きになり、アローナは左のパンチを入れる。鉄槌も入れられるが、ヴァンダレイはアローナの二の腕を掴んで防御。

 残り3分、アローナはサイドからシウバの腰のあたりにヒザ蹴り。王者はブリッジしてガードに戻す。しかしアローナも王者の片脚の上にスネをのせ、フルガードにはさせない。だが、王者はパンチを下から打った直後に右脚を抜き、両脚をがっちりアローナの胴に絡めた。脚を上げていき三角のチャンスを伺う。これは成功しないが、アローナのパウンドはほとんどすべて見切ってよける。やがてブレイクがかかり、スタンドに戻されるが、王者に消極的だとしてイエローカードが出された。これで両者イエロー1枚ずつ。

 残り1分半、大歓声の中、ジャブを振るいながら前に出るヴァンダレイ。アローナはタックルに行くも、ヴァンダレイはこれをいなして崩す。すぐさま片脚タックルを狙うアローナだが、させず王者は仰向けになったアローナの脚を蹴る! アリーナの歓声が爆発、王者はまた両手でファンを煽りつつ、蹴り続ける! 左右にステップしながら右左と蹴るが、レフェリーがブレイク。

 残り時間1分を切った直後、左右のパンチを振るって突っ込む王者。たまらずアローナは抱きつき、王者が上を取る。がっちり両手両脚で防御するアローナに、右腕を抜いてパンチを叩き込むヴァンダレイ。アローナも下から細かいパンチを出すが、不利な体勢からで威力がない。ヴァンダレイの右の3連打がヒット。さらに1発入れると立ち上がり、蹴りを入れる王者。アローナの脚をガンガン蹴るが、やがて「立て!」と合図して背中を向ける。最後は立ち技勝負で決するつもりなのだ。しかしアローナが立った直後、試合終了のゴングが鳴った。
 満面の笑みを浮かべて両腕を突き上げるヴァンダレイ。アローナも片腕を上げ、笑みを見せる。20分の死闘は終わり、判定決着となった。

日本で最も愛される王者になった瞬間

 1人目のジャッジ大橋は王者。アローナは戸惑った顔を見せる。だが2人目のジャッジ三宅はアローナ。息をのむ大観衆。そして最後のジャッジ、マット・ヒュームの票は、王者に! 2−1の判定で、ヴァンダレイが防衛を果たしたのだった。

 フジマール・フェドリゴ会長らシュートボクセ勢がヴァンダレイを抱きしめ、全員で輪になって肩を組み、子どものようにぴょんぴょん飛び跳ねて狂喜した。人生最大のリターンマッチで、ヴァンダレイはリベンジに成功したのだった。一方、失意に包まれ退場するアローナにも、満場のファンから惜しみない拍手が送られた。

「困難にあっても、諦めないことが大事なんだ」
 王者の認定証とトロフィーを受け、最後にPRIDEの榊原社長から手渡されたベルトを腰に巻いたヴァンダレイは、マイクを取ると、「みんなに本当に感謝している。みんなの応援のおかげで力いっぱい戦えるんだ」と語った。
「人生では困難な時がある。でも諦めずに戦い、勝ち続けることが大事なんだ。日本のファン、ブラジルのファンに心から感謝している。アリガトー!」と叫んだ。

 勝者ヴァンダレイのテーマ曲Sandstormが会場に流れると、アリーナには手拍子の大合唱が起きた。立ち上がって大声援を送るファンの間を、ベルトをかざしながら退場していくヴァンダレイの目には、今回は悔し涙の代わりに、歓喜の涙が滲んでいた。
 地球の裏側から日本にやってきた無名の若者が、最初は「外敵」「悪魔」と呼ばれて憎まれながら、折れることのない心で戦い続けるうち、日本人に最も愛される王者となった。そのファンからの寵愛と期待を裏切ることなく、前回の屈辱を晴らすことができた。この試合もまたヴァンダレイにとって忘れられない一戦となった。 

※1 アントニオ猪木がモハメッド・アリと戦った際、マットに仰向けに寝て脚を相手に向け、立ったまま近づいて攻めようとする相手に、蹴りを出した。この体勢を「アリvs猪木状態」といい、総合格闘技ではよく見られるシーン。

<続く>

(文:稲垣 收――WOWOW UFC解説者)
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