ポスト竹下と期待される逸材、宮下遥=全日本の未来を担う女子高生セッター

田中夕子

中学生で岡山入団もぶち当ったVリーグの壁

まだ女子高生ながら、岡山でセッターのレギュラーを務める宮下 【写真は共同】

 11月に開幕したV・プレミアリーグ女子のレギュラーラウンドも残すところ10試合となり、後半戦に差しかかった。NECレッドロケッツ、久光製薬スプリングス、岡山シーガルズ、東レアローズが熾烈(しれつ)な上位争いを繰り広げる中、その状況をも「ワクワクする」と言ってのける、注目の若手セッターがいる。

 宮下遥、18歳。

 大阪国際大和田中学在学時の2009年に、15歳2カ月で岡山に入団。170センチを超える大型セッターとして期待され、入団直後から内定選手として試合出場の機会を得た。年齢の若さから、当初は話題性ばかりが先行したが、チームを率いる河本昭義総監督は、当時中学生だった宮下が持つ才能を見逃さなかった。

「トスを上げる時の重心移動と、ちょっとしたタイミング、“間”を調整する能力に長けている選手。彼女より伸びのあるトスを上げるセッターはほかにもいるでしょうが、あれだけの意識と潜在能力、度胸を備えた選手はそういません」とその能力を絶賛する。セッターを育てるには、理屈よりも経験とばかりに、河本総監督は10年から宮下をレギュラーセッターに抜擢(ばってき)した。

 とはいえ、いくら将来を担う可能性を有する逸材だとしても、すぐに勝てるほどVリーグも甘くはない。岡山はセンター、ライトの絡みなど、ほかのチームよりも複雑で独自のコンビバレーを攻撃の生命線とするため、アタッカーの動きに早く合わせようとすると、宮下が持つ長所であるはずの“間”が生かせず、トスも低くなる。その結果、スパイカーも打ちきれない場面が目立ち、ポジションを獲得した1年目はレギュラーラウンドで1勝25敗の8位。屈辱を味わうこととなった。

ハイレベルな戦いを通じて感じた悔しさ

 屈辱のシーズンから1年。宮下は、悔しさを糧として、着実に成長を遂げた。

 転機が訪れたのは昨年だった。岡山はレギュラーラウンドの最終戦で4位に滑り込み、ファイナルラウンドに進出。宮下は初めてファイナルラウンドを経験した。レギュラーラウンド上位4チームによる総当たりで、ハイレベルな試合の連続は、それまでの長いリーグとは全く別の戦いだった。

 相手の意表を突くためにと、積極的にバックアタックを攻撃に取り入れようとしたが、「この場面で使って大丈夫なのか?」と不安がよぎり、思いきったトス回しをすることができずに終わった。

「バックアタックを使おう、使わなきゃとは思うけど、相手のサーブや攻撃に押されてレシーブがバタバタしている時に(トスを)上げても混乱する。大事な時にこの攻撃を使いたいと思うならば、その前に準備をしていなければダメなんだと気づかされました」と自分の思い通りにプレーできなかった悔しさをかみしめた。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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