準優勝も「選手にはありがとうと伝えた」=高校サッカー選手権決勝後 米澤監督会見

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決勝で敗れはしたものの、京都橘の米澤監督は選手たちがたくましく成長していく姿に幸せを感じたようだ 【スポーツナビ】

 第91回全国高校サッカー選手権の決勝戦が19日、東京・国立競技場で行われ、京都橘(京都)は鵬翔(宮崎)にPK戦の末に敗戦を喫した。2度のリードを奪いながらも勝ちきることができず、初の選手権優勝を果たすことはできなかった。

 悪天候のため14日から19日に延期となった決勝戦は、京都橘が2度リードを奪いながらも、鵬翔の粘りにあい、2−2のまま延長戦にもつれ込む。延長戦でも勝負はつかず、試合はPK戦に。決勝戦まで3度のPK戦に勝利してきた鵬翔は5人全員が落ち着いて成功したのに対し、京都橘は1人目の仙頭啓矢が失敗。優勝を目前としながら涙を飲んだ。

 試合後、京都橘の米澤一成監督は「素敵な選手たちに出会えて監督冥利(みょうり)に尽きる」と優勝は逃したものの、決勝までともに戦いぬけたことに対して充実感を口にした。また、創部12年で決勝進出を果たしたことについては「12年というのは短いですけど、僕たちにとっては毎日が勝負でしたし、こういう形でここに来れたことを幸せに思う」と決勝まで来れたことの喜びを語った。

みんな人間的にすごく成長してくれた

 選手は本当によくやってくれたと思います。ここまで来れたこともそうですし、今日のゲームも本当によくやってくれました。結果は残念ですが選手たちを称えたいと思います。

――先制して得意な形に持ち込んだが、セットプレー対策をしたにもかかわらず逃げ切れなかった理由は?

 セットプレーに関しては鵬翔の得意な形があります。勝負強いところも試合前から分かっていましたし、今回については鵬翔が上だったと思っています。対策もやってきましたし、選手はよくやってくれました。

――選手たちには最後にどんな言葉をかけたか?

 3年間ご苦労様ということと、(チームの)立ち上げ当初はここまで来れるとは思わなかったということです。それに、素敵な選手に出会えて監督冥利(みょうり)に尽きると思いますし、選手にはありがとうということを伝えました。

――同好会的なところから始まり、12年で決勝まで来たことについてどう思うか?

 今までOBの方々が継続してやってきてくれたことを、今年の選手たちもやってくれたと思っています。そのうえで、ひとつの歴史がこのような結果となったのではないかと思っています。12年というのは短いですが、僕たちにとっては毎日が勝負でしたし、こういう形でここに来れたことを幸せに思っています。(今年のチームは)良い形でここまで来れましたが、良い時は長くは続きません。新しいチームで今日の思いを背負ってまた来年から頑張りたいと思います。

――今大会での2トップの生かし方について(安藤隆人/フリーランス)

 2トップと言われていますけど、あの2人の関係は良くできていましたし、そこに関わるほかの選手もうまく機能していました。もうひとつはディフェンス面での頑張りがあったおかげで、彼らが生きたのではないかと思います。それに、チームのトータルとしてよく機能していたと思います。(2トップが)広がっている場面では、うまくパスをつないでくれていました。(選手間の)距離が遠いと機能しないので、それを埋めるための(練習を)やっていました。

――雪で延期になったことで、この1週間のプランをどう考えていたか。またフィジカル的に最後まで戦えた要因は何だったか(河治良幸/フリーランス)

 特にフィジカルトレーニングに重きを置いているチームではないので、これまで実践してきたなかでの技術や戦術を落とし込むトレーニングをやってきたつもりです。夏にはプリンスリーグなどで鍛えられていたので、それを生かしながら1年間のチーム作りをしてきました。この1週間に関しては、思っていた以上に選手は疲労していたので、疲労を取ることに専念して調整していました。今日についても、延長(の可能性)もあり得ると思っていましたので、そのなかで選手は日ごろからやっていることプラスアルファで走ることができたのではないかと思います。そして、彼らの持っている潜在能力を引き出せたという意味では、この大会にも皆さんにも感謝したいです。90分のゲームを戦うなかで、どういう風に選手は動かないといけないかということは、プリンスを戦わせてもらいながら落とし込んでいったので、それは選手たちも理解できていたのかなと思います。


――スタメンで1年生と2年生が3人ずつ入るなか、3年生が5人いるが、彼らの成長ぶりについて

(ベンチ入りの)20人に入れない選手のなかには3年生もいましたので、選手それぞれにいろいろと思いがあったと思います。(出ている者も出ていない者も)お互いを認めて、お互いを高め合うということは3年生がリードして成長できたと思います。それを受けて1年生は、自分たちが出ているということについて「責任を持ってやらなあかんな」という気持ちでいてくれたので、いい相乗効果があったと思いますし、みんな人間的にすごく成長してくれたという意味ではうれしく思います。

(キャプテンの高林幹が出られなくなったが)チームとしてはこれまでの流れを継続させることにしましたし、彼自身のプレーの問題ではありませんでした。高林もいい経験をしたので、この悔しさであったり、成長した部分を次のステージで生かしてほしいと思います。

関西のレベルの底上げがもっと進めば

――2大会前の久御山の出場によって京都の高校サッカーの流れが変わったと思うが、どういう影響があったか?

 流れが変わったということはそんなに感じていないです。京都にはたくさん優秀な指導者がいるので、そのなかでいろいろなチーム作りをしていて(それぞれに)特徴がでてきたのではないかと思います。中学生の進学先についてもいろいろな憧れをもって、いろいろ学校に進学していくと思います。ただひとつ言えるのは、久御山もそうですし、うちもそうですけど、「自分たちで努力すればやれるんや」ということは、今回も2つ前の大会でも証明できたのではないかと思っています。そういう意味で京都のレベルが上がってほしいと思いますし、僕自身は確実に上がってきていると思っています。それに、関西のプリンスリーグも高いレベルなので、関西の底上げがこういう形でもっともっと進んでいけばいいと思います。

(京都から優秀な選手が流出していることについては)魅力あるチームを作らないと県外に行くでしょうし、行くのも当然かなと思います。逆に京都に来てくれる選手もいると思いますので、今は県というものがボーダレスになってきています。自分を生かせる学校でやれればいいと思いますし、それがまたひとつの形になればいいと思います。

――プリンスリーグは長期的なレベルアップを目的としているが、リーグ戦と一発勝負のトーナメント戦とでは、選手に対するイメージ作りで違いはあるか?(湯浅健二/フリーランス)

 あります。プリンスでは、自分たちの良いところを出して戦えるのではないかと僕自身考えていますし、思い切ってできる部分もあります。トーナメントは一発勝負ですので、選手たちも「負けてはいけない」という意識になると思います。なので、そういう意味で、それらを併用して高校年代はやっています。それについては両方のいい部分を選手たちには吸収してもらいたいです。今後も大学などでリーグ戦やカップ戦があったりすると思います。そういう文化の中でサッカーが行われていることを意識できる、一番最初の段階だと思うので、その良い部分というものを選手たちに伝えているつもりです。

(選手のレベルアップのためであればリーグ戦が有効か)それはあると思います。ただ今回感じているのは、こういったトーナメント戦のなかでも、選手が試合中にも試合外のところでも成長しているなという部分はあります。そして、集中力を発揮できる場でもあるので、どちらがいいということは僕は考えていません。

――試合が延期になって埼玉でトレーニングしていたそうだが、どんな調整をしていたのか?

 調整に関しては、選手の疲労を取ること。ただ、動きながらということもありましたし、けがを抱えている選手は動く時間を短くするとか、そういう調整をしていました。雪も残っていたので、できることも少なかったです。ただ、そうしたなかでサッカーをさせるのも、いい経験かなと思いました。モチベーションを高く維持することができました。(京都に)帰る、帰らないの判断は学校にしてもらったので、帰ったとしても授業は1日しか出られなかったので、それだったら戻らなくていいのではという判断をいただいて、こちらに残ることになりました。どちらがいいかということは、いろいろな考え方があるし、いろいろな条件もあったのではないかと思います。うちについては、中学入試などもあり、われわれが帰ることで迷惑がかかることもあったのではないかと思うので、この判断については僕も含めて間違っていないと思っています。

――3週間にわたって選手権が行われたのは初めてだと思うが、今後の選手権の日程について考えはあるか(元川悦子/フリーランス)

 長くなったことで選手たちと過ごす時間が増えたことはうれしく思います。ただ、長くなるということについては、3年生がいますので入試とか、費用とか、いろいろな面で迷惑をかけるなというのは実感しています。なので、今回は本当にレアなケースだと思っていますので、そういうことを経験できたのは、僕も選手も貴重なことだったと考えています。だから今後も長くしたほうがいいとは僕個人は思っていません。例年通りでいいかなと思っています。

<了>
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