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敗れ去りしJ内定選手、輝いた未来のスター候補たち
高校サッカー注目選手の戦いを振り返る
鹿島加入内定の豊川(手前)と植田を擁する大津は初戦敗退。この悔しさを糧にJリーグでの飛躍を期待したい
鹿島加入内定の豊川(手前)と植田を擁する大津は初戦敗退。この悔しさを糧にJリーグでの飛躍を期待したい【写真は共同】

 第91回全国高校サッカー選手権大会はいよいよ準決勝を迎える。「波乱の大会」と各方面で叫ばれる今大会だが、ベスト4に名を連ねた学校は、試合をこなすごとに着実に成長をしていったチームだ。あるチームは特筆した個を持つ集団をなぎ倒し、あるチームは堅い守備でライバルたちを打ち破ってきた。その過程において、多くの才能ある有力選手たちが、国立までの長い道のりの途中で涙をのんだ。ここでは開幕戦から準々決勝までを振り返り、大会を彩った選手たち、彩り切れなかった選手たちをピックアップしていきたい。

“高校ナンバーワンDF”植田は初戦で涙

 まず不本意なまま大会を去っていった選手たち。優勝候補の一角と目されていた大津(熊本)は、MF豊川雄太とDF植田直通という共に鹿島アントラーズ加入内定の攻守の二枚看板を抱えながらも、初戦で難敵・旭川実(北海道)の前にPK戦で散った。

 豊川はキレのあるドリブルと多彩な攻撃のアイデアが売りだが、故障明けの影響もあってか、本来の決定力が発揮されなかった。


 植田に関しては、DFという観点からすると、ゼロで抑えたのだから及第点の出来と言っていい。だが、「全国制覇以外考えていない」と公言していた彼にとっては、非常に不本意な大会となった。これまでも悔しさを重ねて成長してきた。だからこそ、この経験も大きなプラスに働くことを期待している。


 1年生の高校選手権では自らのミスで失点して開幕戦敗退。2年生のときのU−17ワールドカップでは準々決勝のブラジル戦、ペナルティーエリア手前で左からの折り返しに対して足を滑らせてしまい、ヘッドでクリアしきれず失点を招いた。結果、ブラジルから金星を奪うことはできなかった。そして、この年の選手権は熊本県予選で敗退。今年度に入っても、インターハイは初戦敗退、選手権でも初戦で涙した。


“高校ナンバーワンDF”として注目を集めたが、大津での3年間は悔しい思いが多かった。しかし、前述したように、これが逆に植田の成長を促すだろう。センターバック(CB)は経験がものを言うポジション。失敗に失敗を重ねて成長していけるよう、この経験がいい方向に転ぶことを期待したい。

名古屋加入の望月は課題も垣間見られた

 初戦敗退と言えば、名古屋グランパス加入内定のMF望月嶺臣もそうだった。今年の野洲(滋賀)はおそらくチーム史上初となるレギュラー全員が3年生で、そのうちの大半が1年生からのレギュラー。まさに「集大成の1年」になっていただけに、今大会に懸ける意気込みは並々ならぬものがあった。しかし、初戦で優勝候補の青森山田と激突すると、ボールポゼッションでは圧倒的に上回り、優勢に試合を進めたが、青森山田の堅い守備を破り切れずにPK戦負けを喫した。


 それでも、望月の華麗なワンタッチプレー、糸を引くようなスルーパス、そして相手の逆を取るパスが随所に見られ、望月のプレーに駒沢陸上競技場に詰めかけた1万5000人の観衆は何度も沸き上がった。だがその一方で、アタッキングサードにいい形で入れるシーンが多いだけに、積極的なミドルシュートや裏に抜け出してのシュートも見たかった。相手にとってより怖い存在となるために、シュートをどう有効活用するか。今後の望月の課題が垣間見られた試合でもあった。


 同じく優勝候補に挙げられていた四日市中央工(三重)も初戦の2回戦で敗退した。しかし、これは大津、野洲と同様に相手が悪かったと言っていい。四日市中央工を破った桐光学園(神奈川)は組織力では間違いなく今大会ナンバーワン。個々が忠実に役割とハードワークをこなし、組織として大崩れすることはない。


 堅実な相手に、さすがのFW浅野拓磨(サンフレッチェ広島加入内定)とFW田村翔太(湘南ベルマーレ加入内定)という高校ナンバーワン2トップも力を発揮できなかった。この2人は間違いなくトップレベルのクオリティーを誇っていた。浅野は今年に入ってから、ボールを受けてからのアクションが成長。受ける前の準備で、常に田村翔だけでなく、両サイド、ボランチを視野に入れており、身体がよりゴールにスムーズに向くようになった。田村翔もトップスピードに入る時間が短くなり、少ないステップと小さな予備動作で加速態勢に入れるようになった。これにより2人のコンビネーションのスピードは格段に向上した。しかし、桐光学園戦では前半風下に苦しみ、さらに劣勢に立たされたことで、彼らにいいボールが供給されなかった。


 豊川、植田、望月、浅野、田村翔。まさに力を発揮できぬまま、彼らの選手権はたった1試合で終わった。植田に言えることは、残りの選手にも当てはまる。次に用意されている大舞台、Jリーグでこの経験を生かさなければならない。

安藤隆人
安藤隆人

大学卒業後、5年半勤めた銀行を退職して単身上京し、フリーサッカージャーナリストに転身した異色の経歴を持つ。ユース年代に情熱を注ぎ、日本全国、世界各国を旅し、ユース年代の発展に注力する。2012年1月にこれまでのサッカージャーナリスト人生の一つの集大成と言える、『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)を出版。筆者自身のサッカー人生からスタートし、銀行員時代に夢と現実のはざまに苦しみながらも、そこで出会った高校1年生の本田圭佑、岡崎慎司、香川真司ら才能たちの取材、会話を通じて夢を現実に変えていく過程を書き上げた。13年12月には実話を集めた『高校サッカー 心揺さぶる11の物語』(カンゼン)を発刊。ほかにも『高校サッカー聖地物語 僕らが熱くなれる場所』(講談社)、があり、雑誌では『Number』、サッカー専門誌などに寄稿。昨年まで1年間、週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!SHOOT JUMP!』を連載した。

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