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30周年、そしてその先に向けて
Jリーグを創った男・佐々木一樹 最終回
Jリーグ自体も、リーグを運営し、事業を展開していくための財源を安定して確保していく必要がある
Jリーグ自体も、リーグを運営し、事業を展開していくための財源を安定して確保していく必要がある【Jリーグフォト(株)】

 Jリーグの初代事務局長、広報室長、理事、常務理事などの立場で2012年3月までリーグ運営に当たってきた佐々木一樹さんに、7回にわたって聞いてきた「Jリーグ20年の裏面史」。最終回は、「30周年、そしてその先に向けて」。

テレビ放映権料とJリーグスポンサー

 クラブ経営の健全化を図らなければならない一方、Jリーグ自体も、リーグを運営し、いろいろな事業を展開していくための財源を安定して確保していく必要がある。


 現代の世界のサッカーをリードするヨーロッパの主要リーグやUEFAチャンピオンズリーグなどの最大の財源はテレビ放映件収入。その規模は、日本円にして1シーズンあたり約500億円から1000億円の規模に当たると言われている。


 一方、現在のJリーグは年間約50億円の規模。佐々木さんは、その事情を以下のように話す。


「以前はNHKを中心にした放映態勢だったのですが、先方の事情で契約続行ができなくなり、2007年からCS放送の『スカパー!』中心という形になりました。スカパー!には、J1とJ2の全試合を生放送するという方針を貫いていただいています。放映権料収入が伸びれば、それだけクラブに配分する額が増え、クラブを助けることができるわけですから、増やしていく努力をしなければなりません。それはこれからの10年に向けて大きなテーマのひとつだと思っています」


「しかし、わたしの感想では、日本とヨーロッパではテレビの視聴習慣が違い、日本では放送を見るのは基本的に『無料』という感覚が強い。NHKには受信料を払っているのですが、有料放送という感覚はない。Jリーグ放映によってスカパー!の契約者が飛躍的に増え、それによって放映権料がうなぎのぼりという形にはなりにくいと思っています。このままの形なら、80億円までいけるかどうかというところではないでしょうか」


 さらにJリーグのトップパートナー(旧オフィシャルスポンサー)についても、「クラブスポンサー以上に厳しい状況」と、佐々木さんは説明する。


「この経済状況下で、日本のナショナルブランドと言われてきた企業が大きな変化の波にさらされています。海外の企業に合併吸収されたり、ナショナルブランド同士の合併などがあり、さらに、自動車会社を中心にナショナルブランドがJリーグクラブの主要株主である場合も多いので、この面でも大変なのです」

ACLにかける期待

07年、Jクラブで初めてACL優勝を果たした浦和レッズ
07年、Jクラブで初めてACL優勝を果たした浦和レッズ【Jリーグフォト(株)】

 では、これからJリーグが発展していく要素はないのだろうか。


「そんなことはない」。佐々木さんは言下に否定する。

「そのひとつがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)です。Jリーグのクラブが、日本国内だけでなく、アジアを舞台に戦う大会がある。さらにそれは世界の頂点を目指す戦い(FIFAクラブワールドカップ=FCWC)に直結している。ACLを通じて、JリーグのクラブとJリーグ自体が大きく飛躍する可能性を与えられています」(佐々木さん)

 アジアサッカー連盟(AFC)では1967年から「アジアクラブ選手権」などクラブの大会を開催してきた。それらを統合し、2002年に新しくスタートしたのがACLだった。「グループステージ」を勝ち抜いたクラブが「ノックアウトステージ」に進出し、優勝を争う大会。現在では日本から毎年4クラブが参加している。


 世界の地域連盟のクラブチャンピオンが結集するFCWCが2005年から毎年の大会と固定されたことで、この大会へのモチベーションはさらに高くなった。


 アジア大陸の最東端という地理的な条件、Jリーグというアジアで最も高いレベルにあるリーグでの戦いの厳しさ、そして日程面などにより、ACLがスタートしてから数年間、Jリーグのクラブはなかなか結果を残すことができなかったが、2007年に浦和レッズが優勝、翌年にはガンバ大阪が続いて、「日本の時代が来るか」と思われた。

今年、開催国王者としてクラブワールドカップに出場したサンフレッチェ広島
今年、開催国王者としてクラブワールドカップに出場したサンフレッチェ広島【Jリーグフォト(株)】

 しかしその後は決勝進出さえなく、国内リーグを犠牲にしてもこの大会に臨むという姿勢をもつ韓国のクラブに2009年以降の4大会のうち3大会で優勝を許している。


「Jリーグはアジアのクラブサッカーのモデルになっている。そのJリーグのクラブが決勝戦にすら進めないのでは、アジアでの地位も下がってしまいます。いま、タイなどアジアのいくつもの国でJリーグのテレビ放映が行われるようになりましたが、関心を高めるためにも、毎年優勝とは言わないが、常に決勝戦に出ているようになってほしいと思いますね」と佐々木さん。


「たしかに日程や旅程は厳しい。しかし、そうした悪条件をはねのけて結果を出すのが強いチームと言えるのではないでしょうか。逆に言えば、そこが強くならない限り、強いJリーグの組織はできないと思います。そのために、Jリーグも、ACL出場クラブには登録選手枠を増やすなどの措置を取ってきましたし、これからも必要なサポートを行っていくはずです。アジアのチャンピオンになる、世界を相手に好試合をして、そして勝つという好循環が生まれていったら、さまざまな面に好影響を与え、Jリーグ発展の大きな推進力になると思います」

大住良之
大住良之

サッカージャーナリスト。1951年7月17日神奈川県生まれ。一橋大学在学中にベースボール・マガジン社「サッカーマガジン」の編集に携わり、1974年に同社入社。1978年〜1982年まで編集長を務め、同年(株)ベースボール・マガジン社を退社。(株)アンサーを経て1988年にフリーランスとなる。1974年からFIFAワールドカップを取材。1998年にアジアサッカー連盟「フットボール・ライター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。 執筆活動と並行して財団法人日本サッカー協会 施設委員、広報委員、女子委員、審判委員、Jリーグ 技術委員などへの有識者としての参加、またアドバイザー、スーパーバイザーなどを務め、日本サッカーに貢献。また、女子サッカーチーム「FC PAF」の監督として、サッカーの普及・育成もつとめる。 『サッカーへの招待』(岩波新書)、『ワールドカップの世界地図』(PHP新書)など著書多数。 Jリーグ開幕年の1993年から東京新聞にてコラム『サッカーの話をしよう』がスタートし、現在も連載が継続。

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