若きサムライが見せた堂々たる初陣=山本ジャパン、キューバとの第1戦に勝利

田尻耕太郎

小久保も感服する新世代の強心臓

先制ソロを放った炭谷(右から2人目)ら、勝利を喜ぶ侍ジャパン。若手の躍動が印象的な試合だった 【写真は共同】

 試合後、このうち数人の選手に話を聞くことができた。大隣は「自分のピッチングをしっかりとすることができた」と胸を張り、大島は「塁に出たら走るつもりで準備をしていました。ノーサインです。監督からも『走れる選手はどんどん走れ』と言われていたので」と語った。

 また、大島は初代表戦を終えた感想について「普段(同じチームで)やらない選手とプレーするので雰囲気が違った。でも、試合ではそれは感じませんでした」と振り返った。実は“代表のプレッシャー”などという言葉を若干期待しつつ質問しただけに、肩透かしをくらった感じだった。だが、4番を務めたT−岡田(オリックス)にしても「緊張したのは試合前だけ。試合が始まれば大丈夫でした」と話す。試合前に話を聞いた松田にしても「代表のユニフォームを着れたことがうれしい」とはしゃぎ、重圧などまるで無縁なのだ。

 彼らの姿に、今季限りで引退した、元ソフトバンク・小久保裕紀の言葉を思い出した。「自分が若い頃と今の若手を比べて、練習量では負けていなかったと思います。群を抜いていたから。でも、逆に度胸とか、ここぞという場面でのプレーは、今の若い選手たちの方が、はるかに腹が据わっている。動じるとか、あがって力が発揮できないということが少ないように感じますね」

 その選手たちを上手にアシストしたのは、山本監督をはじめとした首脳陣だった。
「選手が普段の力を発揮できるムードづくりや準備をしたい。とにかく選手がやりやすいように」(山本監督)
 大島のスチールなど、まさにそれの象徴だった。
 
 グラウンドで躍動する若きサムライの姿に、試合が進むにつれてスタンドの野球少年たちの反応も明らかに変わっていった。大声で選手の名前を呼び、時にはトランペットのリズムに乗って飛び跳ねて応援するようになった。

 確かな強さと魅力を見せてくれた若きサムライたち。侍ジャパンにスター不在と言うなかれ。たとえメジャーリーガーがいなくとも、ニューヒーローが必ずここから生まれる。また、今年のプロ野球は数多くの偉大なプレーヤーたちがユニフォームを脱いだシーズンとなった。世代交代の波が訪れる中で、ここから世界に名を轟(とどろ)かす名プレーヤーがまた誕生することにも期待したい。

 侍ジャパンとキューバの国際親善試合は、18日には札幌ドームに舞台を変えて行われる。第1戦には、堂林翔太(21歳・広島)や筒香嘉智(20歳・横浜DeNA)、澤村拓一(24歳・巨人)らが出場しておらず、第2戦では彼らのプレーも見どころの一つとなる。

<了>

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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