インドネシアからやって来たバイオレンス・スパルタンX

しべ超二

なつかしのジャッキー、現代MMAに通じる場面も

最狂の敵マッド・ドッグ(右)の狂犬&ゾンビぶりは特筆だ 【(c)MMXI PT. MERANTAU FILMS】

 そして主役の新人警官ラマが劇中で駆使するのが、インドネシアの伝統武術であるプンチャック・シラット。ラマを演じるイコ・ウワイスは実際にプロのシラット家であり、本作では主演のほか格闘シーンの振付も担当している。
 もちろん映画用のアレンジはあるのだろうが、本作でイコが見せる戦いは前腕を使った受け→そこからの打ち返しなど『○○拳』時代のジャッキー(・チェン)を思わせるところもあり、エグい描写の中にもどこか懐かしさを感じさせたりもする。
 また、接近戦ではヒジ・ヒザを多用し、投げや打ち倒して(=ダウンさせて)グラウンドへ持ち込んでも、寝かせたままにしておかなければスタンドへ戻って打撃で手酷い反撃に遭ったりと、現代MMAに通じる場面もある。

 強力な蹴り&拳を併せ持つ最狂の敵マッド・ドッグにも注目。演じるヤヤン・ルヒアンはシラットをはじめとした武術・インストラクターの経験を持ち、本作でイコと同じく振付を担当している。作中でのマッド・ドッグの狂犬&ゾンビぶりは特筆で、来日イベントでBerryz工房・ももちに見せたヤヤンのあまりにもいい人すぎる素顔(※こゆビームに吹っ飛び大型バンプ)は、映画とのギャップも相まり余計に衝撃的であった。

“痛みの伝わる一本”だ

“痛みの伝わるプロレス”ならぬ“痛みの伝わる一本”に 【(c)MMXI PT. MERANTAU FILMS】

 ビル、そして倒しても倒しても果てることのない敵というシチュエーションは、ファミコン・カセットの「スパルタンX」を思い出させたりもする。もちろん、何とものどかなファミコン版「スパルタンX」とは異なり、「バイオレンス・スパルタンX」ともいうべき本作は、途中で「もう勘弁してくれ」と言いたくなるような痛さとリアリティを伴う作品だ。“痛みの伝わるプロレス”、ならぬ“痛みの伝わる一本”。
 鑑賞後、102分間駆け抜けたような疲れを覚える格闘アクションだ。

 なお、「帰ってきたシネマ地獄拳」では謎の格闘技プンチャック・シラットに次回潜入取材を刊行。乞うご期待。

映画『ザ・レイド』(配給:角川映画)は渋谷シネマライズ、角川シネマ有楽町ほかにて全国公開中

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著者プロフィール

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。松濤館空手8級。

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