予期せぬクルピとの邂逅にも輝く柿谷の才能=成長した姿を見せつけ、C大阪の攻撃をけん引

小田尚史

毎試合必ず1度以上は決定的な仕事をする

ゴールを決め、祝福される柿谷(中央)。清武、キム・ボギョンが去ったC大阪の攻撃陣をけん引している 【写真は共同】

 9月29日に行われたJ1第27節のヴィッセル神戸戦。セレッソ大阪は退場者を出し、1人少ない状況の中で、3−2と逆転勝ちを収めた。J1残留へ向け、貴重な勝ち点3を獲得している。その試合で、ゴール前へ絶妙なクロスを上げ、2−2となるシンプリシオの同点弾をアシストしたのが柿谷曜一朗だった。第26節の清水エスパルス戦では、C大阪のJ1ホーム通算400ゴールも決めるなど、毎試合必ず1度以上は決定的な仕事をする働きぶりで、ピッチ内で輝きを放っている。

 2年半ぶりに復帰した古巣・C大阪で、柿谷がどのようなプレーを見せるのか。今季のJリーグ全体を見渡しても、それは注目点の1つだった。結果から言えば、現在、J1第27節までに8得点。レギュラーに定着した第14節からの14試合で7得点を挙げ、2試合に1点のハイペースで得点を量産。清武弘嗣、キム・ボギョン移籍後の攻撃陣を立派にけん引している。

FWとして先発に定着、ゴールを量産

 序盤はベンチスタートが続いていたが、途中出場でインパクトのあるプレーを見せると、第10節の神戸戦でJ1初先発を勝ち取った。「キャンプからずっと一生懸命やってきたことが実ったのかなとは思いますが、これで終わりではないし、まだ始まってもいない」と初先発に対する思いを話した。試合には敗れたが、翌節の清水戦も引き続き先発。FWの一角として起用された。

「(セルジオ・ソアレス)監督からは、『ゴールに近い位置でプレーしろ』と言われている。ボールを持ったら仕掛けて、決定的な仕事をしたい」。そう話して臨んだこの試合で、ケンペスのヘッドがポストに当たった跳ね返りを押し込み、柿谷はJ1初ゴールを決めた。試合は後半アディショナルタイムに失点。引き分けに終わったため、試合後は言葉少なだったが、柿谷自身、J1での確かな一歩を踏み出した。

 その後もFWとしてのプレーが続いた。「(2トップを組む)ケンペスは豪快にゴール目がけて行くから、こぼれ球を狙ったりもしています。相手DFにすきができた時、自分が裏を狙うイメージもあります。キヨ(清武)やタカ(扇原貴宏)、(山口)螢からはいいパスも出るし、裏を狙う動きは続けたい。(FW起用は)監督からの『ゴールにこだわれ』というメッセージだと思うし、その要求に応えたい。役割も定まってきたし、今は日々が充実しています」。

 ゴールに近い位置で、自身の能力を最大限に発揮できる環境を得た柿谷。6月は覚せいモードに入る。ナビスコカップ予選第5節の川崎フロンターレ戦、7節のサガン鳥栖戦でそれぞれ2ゴールを挙げると、リーグ戦でも、第14節のサンフレッチェ広島戦でリーグ戦2得点目。そして、清武のC大阪ラストマッチとなった第16節の浦和レッズ戦では、0−1で迎えた後半アディショナルタイムに殊勲の同点ゴールを挙げた。

 7月に入っても勢いは止まらない。第17節の横浜F・マリノス戦では、浦和戦と同じく0−1で迎えた終盤に、難易度が非常に高い、トラップからの反転ボレーシュートを決めてみせた。

「キヨくんが抜けた後を埋めるのは曜一朗君。今の曜一朗君は得点を取ってくれる雰囲気を毎試合持っている。すごく信頼している」(山口)。「曜一朗ばかりに頼ってもいられないけど、今はアイツがチームを引っ張ってくれている」(藤本康太)。敗色濃厚な試合を立て続けに救う活躍で、チームメイトの信頼も完全に獲得した。

 柔らかなボールタッチに、狭いスペースをすり抜けていくスピードに乗ったドリブル。背後からのボールに対し、背中に目が付いているかのようにピタリと止めるトラップ。柿谷は今季、その技巧をピッチで存分に発揮している。また、そういった曲芸的なプレーをしっかりと結果に結び付けている点も、これまでの彼とは一味違う点だ。さらには、オフ・ザ・ボールの動きや、ボールを奪われた際の守備にも進歩がみられる。彼のプレーを見るだけでも、入場料を払う価値がある。そう思わせる選手というのは実に貴重である。

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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