清武と乾の「ミニ香川対決」が示した現状=ドイツで交り合った元C大阪コンビ
流れの中からのチャンスは数えるほど
切れ味鋭いドリブル突破からゴールを決めた乾。成長を感じさせるプレーを見せた 【Bongarts/Getty Images】
互いに、ロングボールに頼るのではなく中盤を使って組み立てながらゴールに迫ろうとするサッカーだ。ただ、ニュルンベルクの攻撃は相手ゴール前で停滞し、ペナルティーエリアに侵入する回数自体が少なく、最終的にはセットプレーをいかに取るかということに終始する。そのセットプレーに迫力も精度もあるのだが、どのようにそのチャンスを得るかということに執着してしまうと見る者にとっては少々つまらない。もちろん、清武のキックも素晴らしく、そのキックを信じてゴール前の攻防を繰り広げるさまもなかなか見られるものではなく面白いのだが、流れの中からのチャンスは本当に数えるほどだったのが残念だ。
清武自身は前半38分に左ポストを直撃する強烈なミドルシュートを放っているが、これも流れというよりも単発のチャンス。76分の得点もやや左からのフリーキックをポルターが頭で合わせたものだった。
清武は試合直後とは表情を変え、日本メディアには「話したくない」と言い、バスに乗り込んだ。この日の戦況と心情を説明することを避けた。
成長を感じさせた乾のプレー
「守備のことは意識している。監督からも要求される」
同時に、攻守に動きすぎている印象もある。もう少し高い位置でゴール前でのプレーに専念できたらと思う一方で、低い位置から乾のスピードで出て来られたら相手も嫌うに違いない。フランクフルトではまだ4試合をこなしたに過ぎず、時間とともに効率良いプレーを覚えていくだろう。
得点シーンは、前節にも増して素晴らしいものだった。左サイドでボールを受けると、ほぼ真横にスピードのあるドリブルで進む。DF2人と対峙(たいじ)すると、縦へ向うそぶりを一回見せながら、その間を斜めに入って行き、最終的にはもう1人DFをかわし右足でゴール右隅に流し込む。「縦にいくふりがうまくいった。その後も冷静だったのがよかった」と、乾自身は淡々と振り返った。
このゴールに興奮気味なのがフェー監督だ。前節は乾のトラップを褒め、今節はシュートを称賛。高い技術に、まるでファンのような反応を見せている。
「シュートを決めたらこれまでは満足していたから、その前のことは忘れようと思って」と、乾はできる限り冷静になろうと努めているように見えた。守備に関しても、シュートに関しても若かりしころとは少し違う。試合中に感情的になることもなく、90分戦い抜くあたりに成長を感じる。2部のボーフムを経てたどり着いたフランクフルトでの今シーズンを勝負だと認識していることが強くうかがえる。
ブンデスリーガ第5節はミッドウィークの火曜日(25日)、水曜日(26日)に開催される。フランクフルトは火曜日にドルトムントとの対戦を控える。乾はドルトムントの無敗記録を止めようと意気込んでいたが、これは第4節にハンブルガーSVが達成してしまった。しかし、強豪との一戦で躍動するに違いない。清武が所属するニュルンベルクは酒井宏樹がいるハノーファー96と対戦する。酒井も第4節では本職ではない右MFではあるがリーグ初出場を果たしたばかり。仲良し2人の攻防も楽しみである。
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