鮫島彩、仙台への帰還と挑戦=2部チームから目指すさらなる高み
8500人を超えるサポーターの温かい出迎え
鮫島(左)は後半から左サイドハーフとしてプレーし、得点に絡む活躍でサポーターを沸かせた 【写真は共同】
そして9月16日、中断していたチャレンジリーグが再開。ベガルタ仙台レディースはホームでAC長野パルセイロ・レディースと対戦した。ユアテックスタジアム仙台にはホーム開幕戦の6532人を超える8658人というチャレンジリーグとしては驚異的な数の観客が集まった。
鮫島ら選手がウオーミングアップでピッチ上に現れると、ゴール裏のサポーターから「お帰り鮫ちゃん! これからもずーっと一緒に闘おう」という横断幕が出された。「ずーっと」の横棒は長い矢印になっていて「福島→米→仏→仙台」と鮫島のキャリアが刻まれていた。サポーターの歓迎ぶりに鮫島は「ピッチに入った時にサポーターの皆さまの数の多さや応援の熱さにビックリした。横断幕を見て自分は幸せだな、と感じた。あとはプレーで恩返しできるように頑張っていきたい」と感謝の思いを口にした。
マリーゼ時代からのサポーターに対しても「マリーゼ時代から応援してくださった方たちも、引き続き応援してくださることがありがたい。福島の方々にもわたしたちが活躍していることが届くように、もっともっと頑張っていきたい」と感謝を忘れなかった。
試合前には奥山恵美子仙台市長より、ロンドン五輪銀メダルをたたえる「賛辞の楯(たて)」が鮫島に贈られ、スタジアムは鮫島加入を祝う空気に包まれていた。
仙台デビューは上々、強い決意を胸に
ピッチに立った鮫島はコンディションや連係の不安を吹き飛ばすかのような質の高いプレーを見せた。積極的に縦へのドリブル突破を見せ、精度の高いクロスから何度もチャンスを作り、機を見てシュートも放った。そして83分、ゴール前でこぼれ球を拾った鮫島は鋭いシュートを放つ。これはポストに当たったが、こぼれ球を高橋奈々がゴールに押し込んだ。早速得点に絡む活躍でサポーターを大いに沸かせ、試合も3−0と快勝。ベガルタ仙台レディースデビューは上々の形となった。
しかし鮫島は「自分のボールの持ち方一つで、サイドバックやFW、ボランチの選手をもっとうまく生かせる場面もあったので、修正したい」と反省を忘れない。今回の移籍は自分を成長させる“挑戦”でもあるからだ。あらためて移籍について問われた鮫島は「自分の中では勇気のいる決断で、2部(チャレンジリーグ)でやるには常に高い位置を見なければ成長できない。これから自分がどういうプレーヤーになっていくか、1部(なでしこリーグ)のチームでプレーするより見えてこない部分もあるが、そこは自分次第なので自分にプレッシャーをかけてやっていきたい。新たな挑戦としてそのプレッシャーも楽しめるくらい思い切りやっていきたい」と強い決意を語った。あくまで仙台で自分を成長させ、ベガルタ仙台レディースも高みに引っ張る決意を鮫島からは感じる。
鮫島の今回の移籍は、高校時代を過ごした街、かつてのチームメートのいるチームに帰ってきたという意味もあるが、鮫島は“帰還”だけで満足はしていない。仙台の街で自分もベガルタ仙台レディースも成長し、ひいては女子サッカー界を発展させていくという大きな“挑戦”をしようとしている。今後は帰還した鮫島の挑戦が成功し、世界の舞台でより一層の活躍ができる選手へと成長し、宮城・日本の女子サッカーの発展に寄与することを大いに期待したい。
<了>