国枝慎吾、2連覇の偉業を成し遂げた「普段通りのプレー」=車いすテニス
表彰台で笑顔を見せる国枝(中央)。左端が銀メダルを獲得したウデ、右端は銅メダルのフィンク 【吉村もと/MA SPORTS】
対戦相手のウデは世界ランキング1位。試合巧者で150キロを超える強烈なサーブが持ち味だ。国枝も「彼のサービスゲームを破るのはたやすいことではない」と警戒する。ところが、この日のウデはファーストサーブの調子がいまひとつ。国枝は“作戦通り”に、セカンドサーブを精度のいいリターンでプレッシャーをかけ、ゲームの主導権を握った。
大会前、丸山弘道コーチは「パラリンピックという聖域で通用するのは、自分を最後まで信じ抜ける力。普通ではない場所に、普通ではない選手が集まる。そこで普通でいられる人が、表彰台に上がれる」と話していた。そして、この日の国枝は「朝起きた時から落ち着いていた。普段のツアーの試合のようなプレーができた」。試合を通して4度のブレークに成功し、理想的な展開で試合を決めた。
敗れたウデ「シンゴとの試合は楽しいよ」
決勝戦の大舞台でも「普段通り」のプレーを見せた国枝 【吉村もと/MA SPORTS】
これまでのウデとの対戦成績は、29戦して国枝の23勝6敗。復帰後のツアーでは、ウデに3連敗のあと2連勝して、ロンドンに臨んだ。その時の2勝はいずれもフルセットだったが、この日の決勝ではストレートでウデを倒した。互いに刺激し合う二人。試合後、ウデは国枝との戦いをこう振り返った。
「こんな試合のときには攻撃的なサーブをしなくちゃいけないが、何度か失敗したし難しかった。でも(負けて)残念なんてことはないよ。こんな激闘だったんだから、銀メダルで幸せだ。思うに、僕らはどちらも強くなり、より進化した試合ができた。シンゴのテニスについて? チェアーワーク、リターンが本当に素晴らしい。シンゴとの試合は楽しいよ。また二人で試合がしたい」
「スコア以上に実力は拮抗」と国枝
そのなかで、国枝の強みとなっているのが、これまでに数々の厳しいトーナメントを勝ち上がり、タイトルを何度も取ってきたという“自信”だ。決勝についても、「前回の北京で金メダルを取ったという経験が、最後の最後で生きたと思う」と語った。
誰も成し得たことのない、2度のパラリンピックチャンピオンという経験。それは、これからの国枝をさらなる高みへと押し上げることだろう。ロンドン後のプランについては、「考えたけど、答えが見つからないので帰って考えます」とだけ話したが、新たな領域への挑戦を期待せずにはいられない。
<了>
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