新生チェルシーの命運を握る3人の主役=東本貢司の「プレミアム・コラム」
スーパーカップの惨敗はひび割れの前兆か
初参戦のプレミアで異彩を放っているアザール(黒)。新生チェルシーの象徴となるべき存在だ 【Getty Images】
ゆえに「3連勝」は決して胸の張れる結果とは言えないという理屈である。
それほどに、ドログバとエッシェンが抜けてテリー、ランパード、コールがピークを過ぎたチームには、以前ほどの“のしかかってくる”ような総合力と底力のオーラが、薄まって見える。
だからといって、戦術的に何か変化の兆しが見えるというわけでもない。少なくとも今のところは。マタ、アザールの才気が中盤の底を仕切るランパード、ミケルとかみ合うまでに、しばらく時間がかかるのは、ある程度覚悟の上だろう。
根っこにある問題は、ロベルト・ディ・マッテオに対する上層部の信頼度が奈辺(なへん)にあるかだ。例えば、最短でも「2年程度の猶予」が暗黙の了解の内にあるのだろうか。悲願のチャンピオンズ制覇がディ・マッテオの幸運のシンボルとなって、果たしてさしものロマン・アブラモヴィッチにも“心のゆとり”が生まれているだろうか。
その意味でスーパーカップの惨敗は、早くも生じてしまった“傷”、もしくはひび割れの前兆のように感じられて仕方がないのだ。
クラブW杯が将来を決める重大な分岐点に
腹をくくり、腰を据えて、このスイス出身のイタリア人監督が自身の信じるチームの新たな方向にこだわり、貫き通せるか。それとも、目先の結果に惑わされるかのような、ただの無策なローテーションさい配に陥って、勝ち負けは別にして好不調の落差が目立った昨シーズン後半の再現となってしまうのか。
その分岐点は、タイミング的にもクラブW杯の成否にも大きく影響されることになるだろう。つまり、カギは今後2カ月間でいかにチームを固められるか。さまざまな要素を考えると、それはできるだけ「若さと柔軟性」を売りにできるものが望ましい。
「一皮むけたチェルシー」をそこでお披露目し、結果(むろん優勝)でその正当性を証明し、プレミア後半戦のタイトル争いと佳境に入るチャンピオンズ(まだ勝ち残っていればだが)でさらなる進化を模索する。
その主役は、当然、トーレス、マタ、アザールでなければならない。
<了>
(協力:FIFAクラブワールドカップ事務局)