新生チェルシーの命運を握る3人の主役=東本貢司の「プレミアム・コラム」

東本貢司

開幕3連敗のチームと内容的には変わらない

第3節終了時点で2ゴールを挙げているトーレス。彼の出来こそがチームの今後を左右する 【Getty Images】

 開幕3連勝、唯一の100%スタート――「チェルシー、絶好調じゃないですか」
 その声にはあえてこう言い返そう。
「開幕3連敗、唯一の勝ち点なしのサウサンプトンと比べて、内容でどれほどの差があったかな? 実際はほとんど感じられない」

 ついでながら、たとえ3試合消化時点とはいえ、危機感に右往左往気味なのは、ともに若く経験の浅いブレンダン・ロジャーズ、ポール・ランバートに明日を託すことにしたリヴァプールとアストン・ヴィラ。それに比べれば、チェルシーとサウサンプトンはほぼ同レベルのチーム状態ではないかということだ。

 いや、チェルシーの場合、第2戦、対・昇格レディングでのディフェンスの綻びはむしろ不安要素に数えるべきかもしれない。案の定(?)、UEFAスーパーカップではアトレティコのエース、ラダメル・ファルカンにめった切りにされた。ちなみに、このコロンビア人ストライカー、今の今レアル・マドリードで「疎外感」にさいなまれているクリスティアーノ・ロナウドの“最有力補充要員”だというが、実はチェルシー自身が過去に獲得を検討していたことがある。

 いずれにせよ、今から2カ月ほど後にめぐってくるクラブワールドカップ(W杯)が思いやられる惨敗である。

中盤より前の世代交代を意識させる“人物往来”

 そもそも、チェルシーはスタートダッシュがトレードマークのようなチームだ。一昨シーズンは年が変わったころから徐々に足並みが乱れた格好だったが、昨シーズンの同じころはすでにタイトル争いから脱落しかけていた。

 その段でいくと今シーズンはもっと早い時期に……? そこで警鐘を鳴らすとすれば、地固めをしなければならない重要な時期に(クラブW杯で)ブランクと長旅を強いられる“ハンディ”が気にかかるというわけだ。むろん、老婆心には違いないが。

 今オフ、チェルシーの補強作戦は存外順調、かつ、思惑通りに事が運んだ。

 シーズン終了前にいち早く契約内定を取り付けたマルコ・マリン(23歳だから近い将来を見越してのことだろうが、いまだにこの獲得には一抹の疑問がなくもない)、チャンピオンズリーグ優勝のご褒美のような大物エディン・アザール、オリンピック絡みのオスカー、かねてより秋波(しゅうは)を送ってきたヴィクター・モーゼズ。

 その一方で、サロモン・カルー、ディディエ・ドログバの放出はともかくも、このほどメイレレスが去り、さらにベナユーン、エッシェンをローンに出した(この両名の復帰確率はかなり低い)。“2軍落ち”マルーダの将来もか細い。

 明らかに中盤より前の世代交代を意識させる“人物往来”で、フアン・マタとアザール、ラミーレス、モーゼズ(とマリン?)を主軸にしていく構えと見られるが、やはり役者不足というか“分厚さ”不足は否めない。これでシーズンを乗り切っていくには1ピースも2ピースも物足りない気がする。オスカーが大化けしてくれれば? さて、こういうテクニシャンタイプはプレミアの水に慣れるには時間がかかるものだ。

 それに、テリーとアシュリー・コールに衰えが隠せない今、ギャリー・ケイヒルとダヴィド・ルイス、ブラニスラフ・イヴァノヴィッチに多くを依存するディフェンスの不安がある。希望はライアン・バートランドだけだとは言わないまでも。だとすれば、やはりフェルナンド・トーレスにリヴァプール時代の華と切れ味が戻らなければ、今後の苦戦が目に浮かぶような気がする。

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著者プロフィール

1953年生まれ。イングランドの古都バース在パブリックスクールで青春時代を送る。ジョージ・ベスト、ボビー・チャールトン、ケヴィン・キーガンらの全盛期を目の当たりにしてイングランド・フットボールの虜に。Jリーグ発足時からフットボール・ジャーナリズムにかかわり、関連翻訳・執筆を通して一貫してフットボールの“ハート”にこだわる。近刊に『マンチェスター・ユナイテッド・クロニクル』(カンゼン)、 『マンU〜世界で最も愛され、最も嫌われるクラブ』(NHK出版)、『ヴェンゲル・コード』(カンゼン)。

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