射撃・田口亜希「この点数が、今の実力」=パラリンピック
風を読みきれず、結果が出なかった大舞台の戦い
競技を終え、緊張から解放されたのか笑顔を見せた田口 【吉村もと/MA SPORTS】
「悔しいな」
取材エリアに来た田口は、ひと言つぶやいた。張り詰めていた緊張感から解放され、ほっとした表情のなかに涙がにじんだ。
この種目の勝敗を分けるポイントは、「風」と「光」の読みだという。射座から標的までの間は50メートルあり、強い風が吹くと弾道がそれる。しかも、今回の射撃場の風は「右からでも左からでもなく、舞っている感じ」。この日はその風の流れをつかみきれなかった。また試合中、脚に痙性(けいせい=まひに伴う副作用で起こるけいれん)が出てしまったという。「痙性をコントロールできず、どう撃とうか少し悩んでしまいました」
アテネ、北京とも入賞している10メートルエアライフル伏射(男女混合・SH1)は1日に行われたが、本戦で600点満点中589点の44位と自己ワーストの成績に沈み、こちらもファイナルに出場できなかった。「どちらの種目もいつもの練習の点数が出せてないから、本当に悔しい。でも、射撃は誰かと対戦するスポーツじゃない。この点数も自分が出したもの。これが、今の実力なんだと思います」と結果を受け入れた。
背中を押す応援に感謝
射撃場に通うのは、主に仕事がない週末のみ。「仕事と両立するほうが私は精神的にバランスが取れる」。数を撃つより質を重視した練習に取り組んだ。勝利を見届けようと、試合会場には家族のほか会社のロンドン支社のスタッフらも駆けつけた。「ロンドンに来て何度も不安になったけれど、応援が本当に心強かった。だからこそ、サポートしてくれる会社や友人たちに恩返しがしたかった。みんなに見せられるものが欲しかったな」
まだ見ぬメダルへの思いは、4年後に持ち越された。
<了>
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