この年代の日韓関係は変わる=U−23韓国 2−0 U−23日本

大住良之

韓国を混乱させた大津の強引な突破

大津(青)は強引な突破からたびたび相手のファウルを誘い、韓国をいら立たせた 【Getty Images】

 銅メダルを懸けた日韓対決は0−2の敗戦だった。

 日本がボールを支配し、前半のなかば以降はリズムの良いパス回しと絶好調のMF大津祐樹(メンヘングラッドバッハ)のドリブルで韓国の守備陣をきりきり舞いさせた。しかし、何回かあった決定機を決めることができず、逆にカウンターから前半38分にFWパク・チュヨンに先制点を許し、後半12分にもMFク・ジャチョルにゴールを割られた。
 失点はいずれも自陣ペナルティーエリアから大きく蹴られたボールから。韓国の攻撃が実ったわけではなく、偶然生まれたチャンスをエースがきっちりと決めたという形だった。

 実際のところ、韓国は疲れ切っていた。準々決勝では英国を相手に延長PK戦まで戦い、準決勝ではブラジルの個人技に翻弄(ほんろう)される形になってしまったからだ。
 それに対し、日本は準決勝敗戦のショックから立ち直り、フレッシュな状態に見えた。MF扇原貴宏(セレッソ大阪)を軸に前線の4人が違いによくからみ、韓国陣で試合を進めた。ミレニアム・スタジアムのピッチがもう少し良かったら、パススピードがさらに上がり、決定的に韓国守備ラインを崩す場面も見られたに違いない。

 そして何より韓国を混乱させたのは、左MFでプレーする大津の強引な突破だった。奇術師のようなテクニックとヒップホップダンサーのような身のこなしの大津に対応することができず、ファウルで止めるしかなかったのだ。

 前半23分にMFキ・ソンヨン、26分にDFオ・ジェソク、そして35分にク・ジャチョルと韓国は3人の選手が連続してイエローカードを受けた。いずれも大津へのラフプレーが理由だった。大津に対していかに韓国が神経質になり、いら立っていたか、この事実だけでも明らかだろう。

2大会連続で世界大会出場を閉ざされた相手

 現在のU−23年代(1989年以降の生まれ)は、2大会連続してAFCのU−19選手権で韓国に敗れ、U−20ワールドカップ(W杯)への道を閉ざされた相手だ。

 2008年のAFC U−19選手権では、1次リーグで圧倒的な強さを見せていた日本が、世界大会へのチケットを懸けた準々決勝の韓国戦を前にMF香川真司(当時C大阪、現在マンチェスター・ユナイテッド)を帰国させてしまい、1次リーグでは青息吐息だった韓国に0−3の完敗を喫した。このときの日本には、GK権田修一(FC東京)、FW永井謙佑(当時福岡大、現時名古屋グランパス)ら現在のU−23日本代表の中核をなす選手たちが並んでいた。一方の韓国は、ク・ジャチョル、キム・ボギョン(現在C大阪)、チョ・ヨンチョル(現在大宮アルディージャ、今回の五輪には招集されなかった)らが中心だった。

 続く2010年のAFC U−19選手権でも日本と韓国は準々決勝で当たり、このときには宇佐美貴史(当時ガンバ大阪、現在ホッフェンハイム)を中心にした日本が2−3で韓国に敗れ、2大会連続で世界大会出場を逃している。

 この2世代のU−19代表選手を中心に構成されているのが、日韓の今年のU−23代表である。U−19に続いてU−23でも敗れたら、韓国に対するコンプレックスが生まれ、今後の日韓関係で劣勢になってしまうのではないかと懸念をもつ人もいるに違いない。

 さらに、現在のU−23韓国代表の中核をなすク・ジャチョル、キ・ソンヨン、そしてチ・ドンウォンらは、すでにフル代表として昨年1月のアジアカップなどに参加し、日本代表をも恐れない不敵さを見せていることも思い起こさなければならない。

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著者プロフィール

サッカージャーナリスト。1951年7月17日神奈川県生まれ。一橋大学在学中にベースボール・マガジン社「サッカーマガジン」の編集に携わり、1974年に同社入社。1978年〜1982年まで編集長を務め、同年(株)ベースボール・マガジン社を退社。(株)アンサーを経て1988年にフリーランスとなる。1974年からFIFAワールドカップを取材。1998年にアジアサッカー連盟「フットボール・ライター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。 執筆活動と並行して財団法人日本サッカー協会 施設委員、広報委員、女子委員、審判委員、Jリーグ 技術委員などへの有識者としての参加、またアドバイザー、スーパーバイザーなどを務め、日本サッカーに貢献。また、女子サッカーチーム「FC PAF」の監督として、サッカーの普及・育成もつとめる。 『サッカーへの招待』(岩波新書)、『ワールドカップの世界地図』(PHP新書)など著書多数。 Jリーグ開幕年の1993年から東京新聞にてコラム『サッカーの話をしよう』がスタートし、現在も連載が継続。

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