メキシコの戦略の前に「日本の試合」できず=U−23メキシコ 3−1 U−23日本

大住良之

「ストロングポイント」を出せなかった原因

先制ゴールを挙げたのは大津。しかし、日本の選手たちの足は重く、動き出しは遅かった 【写真:AP/アフロ】

「決勝進出」を懸けたメキシコとの準決勝、U−23日本代表はそれまでの4試合で発揮してきた「ストロングポイント」を出すことができなかった。原因は、自分たちのフィジカルコンディションとメキシコの戦略、両面だった。

 大会開幕前の7月21日、両チームはノッティンガムで対戦し、試合内容としてはメキシコの一方的なペースだったものの、結果は2−1で日本が勝った。日本は永井謙佑(名古屋グランパス)の突破から東慶悟(大宮アルディージャ)が決めて先制、同点で迎えた後半42分には、ゴール前で杉本健勇(セレッソ大阪)が競って落ちてきたボールを大津祐樹(メンヘングラッドバッハ)が鮮やかなボレーシュートでたたき込み、決勝点とした。

 この時点で、日本はまだコンディションにばらつきがあり、5日後に迫った五輪本番に向け不安を抱かせる内容だった。

 だが7月26日にスペインとの初戦を迎えたとき、日本は最高のコンディションに仕上がっていた。何より前線の選手たちの動きがシャープでしかも運動量があり、相手を前線から追い回してプレスをかけ続けたことが、今大会の好成績の基礎となった。

 自陣に引いて守備組織をつくるのではなく、相手ボールになったら場所を問わずボールを持っている選手に詰めていき、パスコースを限定し、相手が少しでもコントロールを乱したらそのまま詰め寄ってボールを奪ってしまう。その守備において前線の4人が連係し、90分間、足を止めることなく続けたのだ。

前で守ることを選択したメキシコ

 スペイン、モロッコ、ホンジュラス、エジプトと、決して弱くはない相手と4戦して失点0という事実は、この前線からの守備と、オーバーエイジとしてこのチームに加わった吉田麻也(VVV)、徳永悠平(FC東京)の経験、そしてボランチとして相手の中盤のエースに時間を与えなかった山口螢(C大阪)らの守備陣がうまくかみ合って可能になったころだった。

 当然、大会前に振り回されたメキシコに対しても、特別なことをするのではなく、これまで通りのサッカーをすれば勝機はあると、関塚隆監督は考えたに違いない。

 一方、メキシコのテナ監督は、今大会に入ってからの日本の戦いぶりを研究し、引かずに前で守ることを選択した。大会前の親善試合ではパス回しのスピードで圧倒したのだが、今度は守備で勝とうとしたのだ。そして、エースのFWドス・サントスをハーフタイムに外し、より日本のディフェンスラインにプレッシャーをかけられる大型FW、ラウル・ヒメネスを投入してその戦略を徹底した。

 これまでの4試合と同じ考えで臨んだ関塚監督。しかし試合が始まってみると、選手たちの足が重く、動き出しが悪いことに気がついた。

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著者プロフィール

サッカージャーナリスト。1951年7月17日神奈川県生まれ。一橋大学在学中にベースボール・マガジン社「サッカーマガジン」の編集に携わり、1974年に同社入社。1978年〜1982年まで編集長を務め、同年(株)ベースボール・マガジン社を退社。(株)アンサーを経て1988年にフリーランスとなる。1974年からFIFAワールドカップを取材。1998年にアジアサッカー連盟「フットボール・ライター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。 執筆活動と並行して財団法人日本サッカー協会 施設委員、広報委員、女子委員、審判委員、Jリーグ 技術委員などへの有識者としての参加、またアドバイザー、スーパーバイザーなどを務め、日本サッカーに貢献。また、女子サッカーチーム「FC PAF」の監督として、サッカーの普及・育成もつとめる。 『サッカーへの招待』(岩波新書)、『ワールドカップの世界地図』(PHP新書)など著書多数。 Jリーグ開幕年の1993年から東京新聞にてコラム『サッカーの話をしよう』がスタートし、現在も連載が継続。

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