アロンソ、チャンピオン獲得へ大きく近づく今季3勝目=可夢偉は自己最高の4位で汚名返上

吉田知弘

トップ争いに水を刺されたベッテル

持ち味を存分に発揮したアロンソ。通算30勝目となる今季3勝目を挙げた 【Getty Images】

 2012年のF1世界選手権の第10戦ドイツGPが22日、ホッケンハイムで行われ、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が通算30勝目となる今季3勝目を飾った。

 ポールポジションから好スタートを決め、67周のうち64周の間トップを快走したアロンソ。その強さが光ったレースだったが、中身を細かく見ていくと決して彼にとって楽なレースではなかった。

 スタート直後から1秒を切る接戦が続いたアロンソとセバスチャン・ベッテル(レッドブル)のトップ争い。ソフトタイヤを使用した第1スティントではアロンソが優勢で徐々に差を広げていく。しかし、お互いにミディアムタイヤに交換した第2スティントになると流れが一転。アロンソは右前輪に異常摩耗が発生しペースが上がらない。ついに28周目には両者の差は1秒を切り、ベッテルはDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)が使用可能になる。ベッテルに抜かれるのは時間の問題かと思われたが、予想外の事態がアロンソにとって追い風となってくれる。

 35周目、2人の背後に周回遅れのルイス・ハミルトン(マクラーレン)が迫り、なんとトップ争いをしているベッテルを抜いてしまう。本来はペースが遅い周回遅れのマシンは道を譲らなければいけないが、逆に周回遅れのマシンがペースの上がらない正規周回のマシンを抜いてはいけないというルールもない。今回、レース序盤にタイヤがパンクし大きく後退してしまっていたハミルトンは31周目にタイヤ交換を行った際、周回遅れとしてアロンソとベッテルの背後でコース復帰。新品タイヤでラップタイムも速かったため、そのままベッテルを抜いたのだ。

 これによりトップ争いに水を刺されてしまったベッテルはペースが乱れ始め、1秒以内だったアロンソとの差が、また広がっていく。一方のアロンソはハミルトンが迫ってきても全く動じることなく周回を重ね、若いベッテルとの違いを見せ付けた。

アロンソは持ち味を存分に発揮

 41周目、アロンソとベッテルが同じタイミングで2回目のタイヤ交換を敢行。チェッカーまで26周も残っているため、両者ともにミディアムタイヤを選択してコースに復帰する。すると、アロンソとベッテルの間に3位を走っていたジェンソン・バトン(マクラーレン)が飛び込み2位を奪った。直前の40周目にタイヤ交換を終えていたバトンはピットアウトラップで思い切りプッシュしてベッテルとの距離を詰めていたのだ。

 何とかトップを死守したいアロンソだったが、またしても右前輪が異常摩耗でペースが伸び悩む。このすきにバトンが詰め寄り44周目から1秒以内のところでチャンスをうかがった。しかし、タイヤがキツくなりながらも後ろの動きをしっかり把握していたアロンソはミスひとつない走りでバトンにすきを与えなかった。

 アロンソが粘り続けている間にバトンのタイヤにも限界が訪れ、残り10周を切ったところでペースダウン。後方から追い上げてきたベッテルに残り2周でかわされ3位でフィニッシュ。しかしベッテルがコース外を走行してバトンを抜いていたことが判明。レース後、ベッテルは20秒加算のペナルティーを受け、繰り上がりでバトンが2位に入った。

 どんな相手が迫ってきても、何ひとつ動じることなくトップを走り続けたアロンソ。彼の持ち味が存分に発揮されたレースを制して通算30勝目。ドライバーズランキングでも154ポイントで、2位マーク・ウェバー(レッドブル)との差を34ポイントに広げ首位をキープした。自身3度目のチャンピオンへ大きく近づく1戦となった。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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