関塚ジャパン、狙い通りではなく“勝ってしまった”2連戦

栗原正夫

依然として残る課題も

吉田(写真)、徳永の加入で守備の安定感は増した 【Getty Images】

 メキシコ戦は、立ち上がりに相手の最終ラインのミスに乗じて、清武弘嗣、永井謙佑、東慶悟と渡り、見事な形で先制した。しかし、その後は腰が引けるような守備が目立ち、メキシコに試合の主導権を渡すと、一方的に押し込まれる戦いに終始した。

 失点シーンは39分、日本が再び相手のミスからチャンスを作り、清武のループシュートであわや2点目かと思われたプレーからのカウンターで、一気に左サイドを突破されると、最後は中央のファビアンに豪快なミドルをたたき込まれた。

「最後、大津が(得点を)取って結果勝てたからいいけど、(失点の場面では)自分が防げればよかった。これから先は、ああいう1本にもこだわっていきたい」
 失点の場面をGK権田はそう振り返ったが、カウンターでピンチを招いたのは、このシーンだけではなかった。

 さらに、アジア予選からこのチームの課題ともいえた、セットプレーの守備も相変わらず不安定ぶりを露呈した。43分には右サイドからのFKを中央フリーのペラルタに、58分には左CKをニアでそらされファーサイドでフリーのエレラに狙われる決定的ピンチ。いずれも相手がイージーなシュートをミスしたことで事なきを得たが、失点しなかった方が不思議に思える場面だった。

吉田、徳永の加入で守備面は安定

 攻撃面では、永井のスピードはメキシコを相手にしても十分通用することがわかり、最終的には、途中出場のふたり、杉本のポストから大津祐樹の見事なシュートで逆転勝ちを手にしたものの、狙い通りの展開で勝てたというよりも“勝っちゃった”という表現が適切だろう。

 もしこれが本番でのスペインだったら“ラッキー”の一言でいいが、事前のテストマッチであれば、喜んでばかりもいられない。

 2試合を通じて、守備面ではOAの吉田と徳永が加わったことで、安定感が生まれたことは確かだ。主将にも指名され、最終ラインから積極的に声を出し、リーダーシップを取る姿が目立った吉田は「ベラルーシ戦で60分くらいやって、今日フルでやって、予定どおりきている。まったく問題ない」と、初戦のスペイン戦の出場に向けて順調な仕上がりを語った。一方の徳永もベラルーシ戦では後半にセンターバックとして出場したが、メキシコ戦では左サイドバックで先発。ともに安定した守備を見せて、持ち味を存分に発揮した。

 この起用法から読み取れば、関塚監督は守備に課題を残す酒井高徳ではなく、徳永を左サイドバックで起用するつもりなのだろう。スタートは徳永、状況によっては酒井高の縦への突破に期待し、途中交代での起用になるのではないか。

 また、「このチームには、ポストプレーヤータイプがいないので、その点で戦い方やビルドアップは工夫する必要があると思う」とメキシコ戦後に吉田が振り返っていたとおり、攻撃をどう組み立てていくかは、本大会に向けての課題だ。

 もちろん、押し込まれることが予想されるスペイン戦などは、カウンターから永井らのスピードを武器に反撃を試みるしか手はないだろうが、ホンジュラスやモロッコを相手にボールをキープできるような展開になれば、杉本の起用法が鍵になってきそうだ。

 ベラルーシ、メキシコを相手に課題も多く浮き彫りとなったが、前線でいえば、永井、大津、杉本の三者三様の良さが垣間見えたことは、数少ない収穫であったといえるだろう。

<了>

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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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