スペイン、唯一無二のスタイルで史上初の連覇=スペイン 4−0 イタリア

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手堅く戦ったスペイン、不運続いたイタリア

敗戦に涙を流したバロテッリだが、十分なインパクトを残した大会だった 【Getty Images】

 リードを得た後のスペインは手堅かった。トップのセスク、トップ下のシャビを除くフィールドプレーヤー8人が自陣低めの位置に4−4のブロックを作り、イタリアの攻撃を受け止める守備に切り替えたのだ。そうなるとイタリアは厳しい。いくらポゼッション重視のスタイルへ移行したからといって、スペインレベルの相手に引かれた状態から崩せるほど遅攻の引き出しはないからだ。

 そして41分、攻めあぐねるイタリアをあざ笑うかのように、スペインは追加点を決めてしまう。ゴール前でバックパスを受けたGKイケル・カシージャスから前線左サイドのセスクへロングフィード。セスクが頭でジョルディ・アルバへ落とすと、アルバはシャビへボールを預けて猛然と前線へ駆け上がる。そこにシャビからの絶妙なスルーパスが通り、決定的な追加点が決まった。両センターバックのポジショニングが不十分だったとはいえ、これもまた先制シーンと同じく最終ラインが後退しながらの守備を強いられた状況で生まれたゴールだった。

 ボール支配率、総パス本数ともにスペインを上回るという意外な数字を出した反面、イタリアは前半を通して、遠目から可能性の低いシュートを打つことしかできなかった。そこでプランデッリ監督は後半開始より動きの重かったカッサーノをあきらめ、前線にアントニオ・ディナターレを投入。前半はなかった裏を取る動きを加えることで、立ち上がりから流れを引き寄せることには成功した。

 しかし、同じく途中出場でファーストチャンスを決めてみせた前回対戦とは違い、この日のディナターレはチャンスをものにできなかった。46分に放ったヘディングシュートはわずかに枠の上。51分にはGKと1対1の決定機もカシージャスにブロックされた。このどちらかだけでも決めていれば、試合の流れは大きく変わっていたかもしれない。逆に言えば、ここで決められなかった時点でイタリアの勝機は尽きたと言っていい。程なく勝敗を決定付ける出来事が起こったからだ。

 56分、イタリアはモントリーボに代えてチアゴ・モッタを投入。21分に負傷退場したキエッリーニを交代させていたため、これが最後の交代枠だった。そしてこのわずか5分後、モッタは右もも裏の肉離れを起こしてしまう。こうしてイタリアは、2点のビハインド背負った状況で、残り30分間を10人で戦わなければならなくなった。

 その後は数的優位を存分に生かしてボールを回し続けるスペインに対し、イタリアは自陣で粘り強く耐えるのが精いっぱい。それでもゲーム終盤に投入されたフェルナンド・トーレスとフアン・マタに2ゴールを追加され、ユーロ、ワールドカップの本大会では同国史上最悪のスコアとなる0−4の大敗を喫することになった。

プランデッリ監督「このサッカーを続けていきたい」

 結果的に屈辱的な大敗を喫することにはなった。だがイタリアが今大会で貫いた攻撃的な姿勢は、長年にわたり結果史上主義と揶揄(やゆ)されてきたこの国のサッカーにとって画期的なことだった。前日会見でプランデッリ監督は言っていた。

「われわれは自分たちの理念と才能を駆使してプレーする勇気を持たなければならない。テレビ観戦する2300万人の国民が望むプレーを提供しなければならない。過去に逆戻りするわけにはいかないんだ」

 目先の勝利だけを求めたサッカーでは後に何も残らない。スタイルの確立と継続。前代未聞の国際大会3連覇を成し遂げたスペインは、その重要性を世界中に示している。試合後プランデッリは言った。

「このプロジェクトを継続すべきだ。われわれはこのサッカーを続けていきたい」

 このチームはこれからもっと強くなる。そんな確信を感じさせる言葉だった。

 1年後、イタリアはスペインと共にコンフェディレーションズカップに出場する。ブラジルの地で両者が再び対戦することになれば、きっと今回の決勝以上のスペクタクルを提供してくれるに違いない。

<了>

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