優勝の可能性を高めるバロテッリの目覚め=ドイツ 1−2 イタリア

後藤健生

メンバーが変わってもパフォーマンスには影響がない

イタリアは5試合フル出場したのはピルロ(左)ら3人のみだっただが、メンバーが変わってもプランデッリ監督は同じように機能させた 【写真:ロイター/アフロ】

 120分戦い抜いた準々決勝から中3日での準決勝。一方、相手のドイツは中5日。イタリアにとって不利な条件だったはずだが、イタリアは最後まで若いドイツを相手に走り負けなかった。

 1つの理由は、5試合フル出場となった選手がGKを含めて3人(ジャンルイジ・ブッフォン、アンドレア・ピルロ、クラウディオ・マルキジオ)しかいなかったことだ(そのほかダニエレ・デ・ロッシが4試合にフル出場し、イングランド戦は80分まで戦った)。

 最初の2試合は3バック、その後は4バックとシステムを変えたためでもあり、また、軽度の負傷や出場停止のような不可抗力による交代もあり、それが結果的に「ターンオーバー」につながった。

 しかし、一般的に考えれば「メンバーが固定できない」のはチームにとってけっして好ましいことではないはずだ。だが、チェーザレ・プランデッリ監督のイタリア代表は、メンバーが変わってもパフォーマンスにはまったく影響がないのだ。

 最初のスペイン戦と次のクロアチア戦で、イタリアは3バックで戦った。

 予選の段階から4バックで戦ってきたイタリアにとって、大会の初戦でぶっつけ本番的に3バックに切り替えたのは大きな冒険だったはずだ。しかも、本来MFであるデ・ロッシをDFの中央に置くという大胆極まりない3バックである。しかし、まるで3バックでチーム作りを進めてきたかのようにこの新システムが機能し、ユーロ(欧州選手権)2008とワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会を制した王者スペインに優勢の試合をして見せたのだ。

 メンバーが変わっても、システムが変わっても同じように機能する。それが、プランデッリ監督のイタリア代表なのである。

チームとしての完成度が高い

 準決勝のドイツ戦では、ドイツのフィリップ・ラームとルーカス・ポドルスキのサイド(イタリアから見て右サイド)を徹底して守り、ボールを左サイドに引き込んでドイツの右サイドバック、ジェローム・ボアテングを引き出して、その裏にリカルド・モントリーボやアントニオ・カッサーノを走らせるという戦略でドイツを攻略した。

 かなり大胆なやり方である。そういうことが可能なのも、チームとしての完成度が高いからにほかならない。

 後半に入ると、ドイツはメンバー交代を含めてやり方を変えてきた。たとえば、後半開始時点から右サイドにマルコ・ロイスを入れることで攻撃力をアップさせる。するとイタリアは押し込まれてしまうが、すぐにデ・ロッシを左サイドに固定するなどサイドの守りを強化して対処した。

 チームとしての完成度が高いので、試合ごとにメンバーやシステムを変えることができるし、試合の中でも自在にやり方を変更することができるのだ。

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著者プロフィール

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、観戦試合数はまもなく4800。EURO(欧州選手権)は1980年イタリア大会を初めて観戦。今回で7回目。ポーランドに初めて行ったのは、74年の西ドイツW杯のとき。ソ連経由でワルシャワに立ち寄ってから西ドイツ(当時)に入った。

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