“芝の女王”ビーナスがまさかの敗退、引退は否定=ウィンブルドンテニス第1日
大きく見えなかったビーナスの姿
ウィンブルドンを5度制しているビーナス・ウィリアムズが1回戦で敗退 【Getty Images】
普通、世界ランキング58位(6月25日付)の選手の1回戦敗退がニュースになることはありません。しかし、ビーナスであれば話は別です。ウィンブルドンで5度の優勝、3度の準優勝を誇る芝の女王の初戦敗退は、初出場の1997年以来15年ぶりです。
番狂わせの主役となったのはエレナ・ベスニナ(ロシア)。世界ランキング79位(6月25日付)の伏兵です。自己最高は同22位の実力の持ち主で、ビーナスも「ほとんどミスをしないし、サーブがよかった」とそのプレーをたたえました。しかし、この“番狂わせ”はビーナスの側にも大きな要因がありそうです。
先の全仏オープンでもそうでしたが、ビーナスの体から強烈なエネルギーが発散されていないのです。
引退した浅越しのぶさんは、ビーナスの妹のセリーナ・ウィリアムズ(米国)と初めて対戦した時、「大きかったぁ」と感想を述べて笑いを誘ったのですが、実際、セリーナやビーナスは、ネットを挟んで相対すると実際の体格以上に大きく見えるようです。しかし、全仏、そして今大会のビーナスは、あまり大きく見えませんでした。
五輪へ向けて前向きな言葉も
そんな見方に関して彼女自身は「本当のところは分からない。だから自分には何も言えない」と話しています。そして、ビーナスはこうも言っています。
「五輪の出場権を得るために、自分の成し遂げたことを心から誇りに思う」
この3月に復帰してから、ビーナスはペトラ・クビトバ(チェコ)、サマンサ・ストーサー(オーストラリア)と四大大会覇者を2人破っています。ランキングは落としていても、それが彼女の実力、そして元女王の意地でしょう。
今回の結果を見れば、記者は引退について聞かないわけにはいきません。しかし、ビーナスは「来年も出場するつもりです」と短く答え、引退を否定しました。
こんな言葉もありました。
「人生とはそういうものだけれど、私はいつもチャレンジしてきたわ。今年はまだ何カ月も残っている。私は自分のテニスを向上させるために努力するつもりです」
約1カ月後にはロンドン五輪も開幕します。「落ち込んでいる時間なんてない」。彼女の本心からの言葉でしょう。
このウィンブルドンで開催されるロンドン五輪。芝の女王ビーナスの巻き返しは見られるでしょうか。出場圏内にランキングを持ってきたこと自体、奇跡的ですが、本番でも奇跡が見られることを期待しましょう。
<了>
文・秋山英宏
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