大学選手権で見せた亜大・東浜の進化した“投球術”

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愛知学院大「手も足も出ない」東浜のピッチング

大学選手権準々決勝で完封勝利を挙げた亜大・東浜。今秋のドラフトで1位指名が確実視されている 【写真は共同】

「球速が早いわけではないのに、手も足も出せなかった感じです」

 全日本大学野球選手権準々決勝の試合後、亜細亜大・東浜巨(4年・沖縄尚学高)と対戦した愛知学院大の田中友博(4年・享栄高)はこう彼のピッチングを表現した。
 東北楽天・田中将大のように150キロを超える快速球があるわけでもない、レンジャーズ・ダルビッシュ有のように“7色の変化球”があるわけでもない。「バッターが打ちに来ていないと分かると簡単にストライクを取っていき、打ちに来ていると分かると力を入れて投げてくる。高めを狙っていると低めに、直球を狙っていると変化球で打ち取られる」(田中)――気づくと三振、凡打の山が築かれていた。これが東浜の“投球術”のすごさだ。

 それを象徴していたのが初戦の八戸大戦と準々決勝の愛知学院大戦の投球の違いだった。
 初戦の八戸大戦は、5回まで10個の三振を数える奪三振ショー。9回149球を投げ、14奪三振の快投だった。対して、愛知学院大戦は三振はわずか4個。しかし、27個のアウトのうち、内野ゴロは14個、外野フライは8個と愛知学院大打線を完全に手玉に取り、たった103球の完封劇を見せた。

「術中にはまりました。完敗です」と愛知学院大・伊藤孝真総監督。初回、1死二、三塁のチャンスをつくった愛知学院大は、4番と5番が相次いでファーストストライクの直球を狙った。しかし、これに対し東浜は「早いカウントから直球を狙っていることが分かった」と、次の回から直球主体の組み立てから変化球主体の打たせて取るピッチングに切り替えた。

「相手が早いカウントから積極的に振ってきたので、それを利用しました」

 相手の絞り球を見抜く危機察知能力、三振を取れるピッチングから打たせて取るピッチングに切り替える修正能力――幅広いピッチングスタイルを使い分けができる東浜の“投球術”の進化を見た。

万全ではない状態が生んだ新たな投球スタイル

 迎えた決勝戦、初回に2死満塁から連続適時打を許し早大に敗れた東浜。10年ぶりとなる大学日本一にあと一歩のところで届かず、東浜は早大の歓喜の輪を見ながら、唇を噛み締めていた。今大会は、調整遅れから直球は140キロ中盤にとどまり、コースを狙った変化球が甘く入るケースも目立った。
 しかし、それでも三振は取れ、打ち取るピッチングで完封も達成した。その巧みな投球術で“現状の全力”は出し切ったと言える。

 2008年センバツを制しドラフト1位は確実と言われながら進学を選んだ。昨年、敗戦が続く時期やけがの経験を経て、東浜は投球術にさらなる磨きをかけた。新たなスタイルを加え、確実に進化していた。

 大学日本一に向けた秋のリベンジ、そしてその先にあるさらなる高みへの挑戦――東浜の進化の道のりはまだその途中である。

<了>
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