岩渕GMが語る「ラグビー日本代表強化計画」
選手として日本代表で活躍し、現在はGMを務める岩渕氏 【スポーツナビ】
選手としては、創造力溢れるプレーで日本代表の司令塔として活躍し、ケンブリッジ大留学や、イングランド、フランスのプロリーグも経験した。36歳の若さで日本代表GMを務める岩渕氏が、「日本代表強化計画」について語った。
「強化の点と点をつないで線にする」
まず、世界における日本の現状についてお伝えします。私たちは19年の日本開催ワールドカップでベスト8以上、7人制では16年の五輪でメダル獲得を目標としています。
現在の世界ランキングで日本は14位。過去最高は昨年の12位です。6月5日からのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)で対戦するフィジーは16位ですが、トンガは9位、サモアが10位と日本より高く評価されています。PNCは上位のトンガやサモアと対戦できる貴重な機会となります。
14位から評価を上げて、19年ワールドカップで8強に入るために、強化の一貫指導体制の確立を目指しています。このことについてはエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)と話し合いながら進めています。
一貫指導体制の確立のために、各代表の連携を強めて、日本代表のエディーHCから若手育成のジュニアジャパン、U−20、高校代表のコーチ陣が集まる機会を増やします。これまでは各代表が連携をとることはあまりありませんでした。
後半20分以降に失点が集中 目指すは世界一のフィットネス
まず、テストマッチ(国代表同士の試合)ではレベルの差があっても最初の20分は拮抗(きっこう)します。そして、後半20分以降に得点が増えます。日本はこの後半20分から、さらにテンポを上げるラグビーを目指します。そのためにはS&C(ストレングス&コンディショニング)の強化が必要です。ただ走るだけではなく、強いプレーが継続できるようにしなくてはいけません。
目指すのは世界一のフィットネスと、世界一のアタックです。
また、これまでのワールドカップで日本は24戦して1勝21敗2分けです。ワールドカップという極限の状況でベストパフォーマンスが発揮できていません。これは経験が少ないことも影響しています。ジョン・カーワン前HCの下で日本代表が欧州の強豪と対戦できたのは07、11年のイタリア戦のみです。しかも、この試合はワールドカップ直前だったため、イタリアにとっては調整の意味合いがありました。
どんどん強豪国と試合を組みたいのですが、実は19年までの上位国のスケジュールはほぼ決まっています。ワールドカップの成績でテストマッチの枠が決まっていくので、健闘したトンガやサモアは良いカードが組めています。
世界トップ10に入るために覚悟を持って臨む
さらに若手を継続して指導するために「ジュニアジャパン」を立ち上げました。現在のスコッドは若手中心に37名で、2週間に一度のトレーニングを行っています。ここには日本代表のスタッフも参加します。6月15日にはPNCの試合を終えたトンガとジュニアジャパンが対戦、7月には日本代表と合同合宿を行う予定です。
日本代表の年間活動日数は112日、19年までだと784日になります。日本代表としてのゲーム数は1年で12試合、19年までだと84試合です。
代表として活動できる日数は世界的に見てもかなり多いです。恵まれた環境と言えるでしょう。上位国と試合を組むのは現状では厳しいですが、ワールドカップで結果を残すために覚悟を持って臨む必要があります。
6月にはフレンチバーバリアンズとしてフランスプロリーグの選抜チームと戦います。これも、できるだけ良い選手を集めてほしいとフランス協会に注文を出しています。
ジョーンズHCはよく「君は世界トップ10に入れる選手か? 君は世界トップ10に入れるスタッフか?」と言います。私は現在、日本代表GMを務めさせていただいていますが、世界トップ10に入れるように覚悟を持ってやっています。
今までワールドカップでしか厳しい試合ができず、経験が不足していました。ですから私はタイトな試合を、どんどん組む必要があります。そして、選手や監督、コーチ、スタッフの仕事をしっかり見極めていく必要もあります。
日本代表を強くするためのさまざまな活動をつないでいく。そのために私ができることをしっかり考えて、これからもやっていきます。