なぜボルトは強いのか!? 朝原さんが秘密を探る=陸上

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驚異的なボルトのストライド

 “ボルト独特の何か”について、北京五輪男子4×100メートルリレー銅メダリストの朝原宣治さんに聞いてみた。

 朝原さんがまず指摘したのは歩数。ボルトは100メートルを41歩で走りきってしまう。最大ストライドは275センチというデータがある。

「ずば抜けていますね。前世界記録保持者のパウエルもストライドは大きいですけど、それでも43〜44歩です。僕は少ないときで45〜46歩でした。ボルトくらいのストライドで走ろうとしたら普通、跳ぶような走りになって回転(ピッチ)が遅くなります。しかしボルトは、ピッチも速くてストライドも大きい。彼しかできません」

 では、どうして大きなストライドと速いピッチが両立できるのか。この問いに対する明確な答えはまだ、科学的には出されていない。ただ、ボルトが走行中に体を「くねくね揺らす動きに秘密があるかもしれない」と、朝原さんは推測している。

「肩を左右に揺らすというか、上下動をさせることで一歩ごとに地面にかかる力を大きくしています。体重計に乗ったときに片脚でグッと踏ん張ると、実際以上の体重が計測されますが、あんな感じですね。地面からの反力を最大限に得るためです。これはボルトだけではなくて、白人最速のルメートルら、そういう動きをするスプリンターは他にもいます。でもそれを体重88キロのボルトが素早くできてしまう。その結果、ピッチを維持しながらストライドを伸ばすことができるのだと思います」

 当然、大きな負荷に耐えられる筋力がないとできないこと。以前、テレビの特番でパウエルの腸腰筋の断面積を測定し、朝原さんと比較したことがあった。
「僕の2倍ありました。ボルトも同じくらいか、それ以上あるんじゃないでしょうか」

 ダイヤモンドリーグではボルトの走りを繰り返し見ることができる。テレビではスローの映像も繰り返しオンエアするので、朝原さんの指摘する動きに注目すると、いっそう興味深くボルトを見ることができるだろう。

<了>

●ウサイン・ボルト(ジャマイカ)
 世界最速であり、最強のスプリンター。2002年の世界ジュニア選手権200メートルに大会史上最年少の15歳で優勝。04年にはこれも史上最年少の17歳で20秒を切った(19秒93)。08年5月に100メートルで9秒72の世界新をマーク。07年までは勝負弱さも見られたが、この年からたくましさも備わり始めた。同年8月の北京五輪では100メートル9秒69、200メートル19秒30と2種目世界新で金メダルを獲得。翌09年のベルリン世界陸上でも9秒58、19秒19と世界記録を更新して2冠。10年は故障で試合出場が少なく、11年も冬期練習が不十分だった影響で本来の力を発揮できなかった。同年のテグ世界陸上100メートルはフライングで失格したが、200メートルは19秒40で連覇を達成した。

<文・寺田辰朗>
◆◆◆WOWOW ダイヤモンドリーグ放送予定◆◆◆

第3戦 ローマ(イタリア) 5月31日(木)深夜2:50[WOWOWプライム]※生中継
第4戦 ユージーン(米国) 6月2日(土)深夜3:20[WOWOWプライム]※生中継
第5戦 オスロ(ノルウェー) 6月8日(金)午前6:00[WOWOWライブ]
第6戦 ニューヨーク(米国) 6月10日(日)午前8:10[WOWOWライブ]
第7戦 パリ(フランス)(現地7月6日開催)
第8戦 ロンドン(英国)1日目(現地7月13日開催)
第8戦 ロンドン(英国)2日目(現地7月14日開催)
第9戦 モナコ(現地7月20日開催)
第10戦 ストックホルム(スウェーデン)(現地8月17日開催)
第11戦 ローザンヌ(スイス)(現地8月23日開催)
第12戦 バーミンガム(英国)(現地8月26日開催)
第13戦 チューリッヒ(スイス)(現地8月30日開催)
最終戦 ブリュッセル(ベルギー)(現地9月7日開催)

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