西武・栗山巧が一流に成長した理由=プロ入り後に磨きをかけた“野球脳”

中島大輔

「僕が積極的に打って出れば、若手選手も振っていけます」

「ライオンズこども基金」発足を発表する栗山(中央)。選手会長として社会貢献にも力を入れている 【写真は共同】

 不動のレギュラーの座をつかむ過程で、栗山は“野球脳”にも磨きをかけていった。失敗を恐れず、果敢に勝負する度胸も身につけていった。

 本拠地5連敗で迎えた4月16日の日本ハム戦では、あえてセオリーに反するプレーを選択した。0対2で迎えた3回裏、先頭打者の上本達之、続く石川貢がいずれも初球を打って凡退した直後、栗山は多田野数人の投じた初球でセーフティバントを試みたのだ。通常なら1球待つべきとされる場面だからこそ、仕掛けどころと映った。
「あの場面に限らず、多田野投手は積極的にカウントを取ってきます。2対0で負けていたから、積極的に狙いました。チームの雰囲気も良くなかったので。ファウルになってもいいと思っていたけど、ヒットになれば良かったですね」

 今季から西武のキャプテンに就任し、4月8日のソフトバンク戦から1番で起用されている。リードオフマンとして初球から積極的に振っていくことを心がける一因は、栗山流のリーダーシップにある。
「僕が積極的に打って出れば、若手選手も振っていけます。ボールを見ていきすぎると、チームにネガティブな雰囲気も出る」

苦しむチームを上昇に導くキャプテン

 今年、個人的な目標として掲げるのは出塁率だ。
「出塁率が上がれば、打率も上がる。出塁率が上がれれば、フォアボールも取れていることになる。出塁率を軸に考えれば、すべての部門をクリアーできます」

 単に塁に出るだけでは飽き足らない。外野手である以上、栗山には追い求めるものがある。
「統一球になってホームランを打てるバッターが減っている分、二塁打を打てるバッターが貴重になってきました。チームからも必要とされます。僕の場合はホームランというより、二塁打ですね。外野の間を抜いたり、シングルの当たりでも走塁で二塁打にする。そういうのも含めて二塁打を多く打ちたい」

 現実を見据えながら、理想を追い求める――2軍からはい上がった頃も、今も、栗山の姿勢は変わらない。そこに今季は、キャプテンとしての責任感が加わった。
「結果を恐れたら、振れなくなります。狙い球とか、カウントが有利とか、いろいろ考えて積極的に振っていきます」
 積極的に、かつ粘り強く。低迷するチームを上昇気流に乗せるべく、栗山は初球から振っていく。

<了>

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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