藤浪だけじゃない大阪桐蔭、全員で勝ち取った優勝旗=第84回選抜高校野球・総括
“抗議”と“質問”、体のケア――今大会で見えた今後の教訓
初戦で大阪桐蔭に敗れた花巻東の大谷(右)は昨夏に患った左座骨の骨折が治り切っていなかった 【写真は共同】
まずは、審判のジャッジに対する抗議。横浜対関東一戦では、横浜の渡辺元智監督が直接審判に抗議し、試合後に大会本部から口頭で注意される一幕があった。
現場の審判団の判定は絶対で、抗議は認められていない。主将または当該選手を伝令に使った“質問”のみができる。光星学院との準々決勝で、難しい判定で質問した愛工大名電の捕手・中村雄太朗(3年)は、「質問をしたが、判定は変わらない。長引かせると審判の方にもご迷惑がかかりますし、自分達のリズムも悪くなる」とすぐに割り切って試合再開を優先させた。これは神宮大会での教訓が大きく、チームが糧とした一端だろう。
必死に務める審判を敬うとともに今一度、抗議と質問の意味の違いを考える必要があるように思う。
もう一つは、選手の体のケアだ。今大会注目の投手であった花巻東の大谷翔平(3年)は、大阪桐蔭との1回戦で完投。しかし、昨夏から患っていた左座骨の骨折が治り切っていなかった。
横浜のエース・柳裕也(3年)は、今年2月に右足甲を疲労骨折していたことが大会後に明らかになった。
春の大会はゴールではなく、夏まで今のチームが続く。さらには、選手自身の将来も考えることが必要に思える。周りを含めて、体をしっかりとケアしてほしい。
体のケアと言う点では報道陣の心配りも必要だ。優勝投手となった藤浪は、ある試合で、インタビューのお立ち台に上る指名選手ではなく、ほかの選手と同様の取材になり記者が殺到。藤浪は、報道陣の要望で不安定な長椅子に立たされ、取材に応えていた。もし長椅子が壊れでもすれば、大事故につながりかねない状況。まして試合で投げたばかりの選手に対する配慮としてはいささか欠けていたと言わざるを得ない。全ての選手が無事に次のステップへ踏み出すことが重要である。
さて、優勝した大阪桐蔭は早くも今月8日に春季府大会の初戦を迎える。西谷監督は、「夏の大阪大会を勝ち抜くのは難しい」と話した。春の“山”以上に夏の“山”は厳しい戦いになる。そして、この大阪桐蔭を目標に全国4000校あまりが、夏の頂を目指す。
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