バトン、開幕戦Vへの3つのポイント=F1 戦い続けた可夢偉は6位入賞をつかむ

吉田知弘

2連覇中の王者ベッテルはなぜ追いつけなかったのか

ベッテルはマクラーレン2台に追いつくために、4台を抜く必要があった 【写真:ピレリ】

 昨年は予選・決勝ともに圧倒的な速さを見せて独走で優勝を飾ることが多かった王者セバスチャン・ベッテル。しかし、今回の開幕戦では今までの圧倒的な速さは影を潜め、ライバルのバトンに惜敗し、2位表彰台という結果に終わった。昨年までの“強すぎるベッテル”はどこにいってしまったのか。

ポイント(3)予選グリッドが決勝レースへ与えた影響

 昨年までと大きく違った点の一つが、決勝スタート時のグリッド順。昨年は予選から圧倒的な速さを見せ付け、常にポールポジションからスタートしていたベッテルが6位に沈み、マクラーレン勢がフロントロー(最前列)を独占。この予選での差が、そのまま決勝でのレース展開にも大きく影響した。

 ライバルのいない最前列からスタートしたマクラーレン2台は、1−2位体制でレースを進めていく。一方、6位スタートのベッテルは追いつくためには、4台のマシンを追い抜かなければいけなかった。特にレース序盤は3位を快走していたミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)のペースに付き合うことになってしまう。シューマッハは11周目にギアボックストラブルでリタイアとなってしまい、ここでベッテルとマクラーレン2台の間にマシンがいなくなる状態となるが、この時点で首位バトンとの差は13.3秒という大差がついてしまっていた。

 これが昨年のベッテルだと、ポールポジションから逃げ切っていくスタイルで独走優勝を繰り返していたが、今年は開幕戦から圧倒的な速さを見せ付けることができず、予選で後方に落ちてしまったことが、最終的に優勝したバトンに追いつけなかった原因の一つとなった。

 ただ「もしベッテルがポールポジションからスタートしていれば優勝できたのか?」と言われると、そうとも言い切れない。特にレース後半、SC導入後のリスタートで、昨年なら一気にバトンを追い抜けるだけの実力を持っていたベッテルとレッドブルのマシンだったが、今回はリスタート直後から置いていかれる展開となった。

 また、昨年のように速いマシンを手にしていれば、予選でもきっちりポールポジションを取れていたはず。そういう意味でも、今年は「レッドブルのマシンが絶対速い」という今までの勢力図が崩れた開幕戦だった。もちろん、今季のF1は、まだまだ先が長く、ヨーロッパラウンドが始まる5月以降で、レッドブル陣営がさらに速さを補ってくる可能性は十分あるが、現時点ではマクラーレンに劣っている部分が少なからずあるかもしれない。

可夢偉、戦い続けてつかんだ6位入賞

困難な状況に置かれながらも結果を出した可夢偉が、チームスタッフとガッチリと握手 【写真:ザウバー】

 今年も、唯一の日本人ドライバーとして参戦する小林可夢偉(ザウバー)。予選ではQ3進出はならず、13位という結果に終わってしまったが、決勝では激しい中段グループの争いに競り勝ち、最後は6位でチェッカーを受けた。

 レース前半から苦難の連続だった。スタート直後にペレスと接触し、リアウイングにダメージを受けるトラブル。さらに、後方から追い上げてきたキミ・ライコネン(ロータス)との接戦になる時間が続く。タイヤにも負担がかかる展開となったが、ライバルたちと同じ「1セット目ソフト→2セット目ソフト→3セット目ミディアム」というレース戦略で、後半まで中段グループの争いに加わっていた。

 これが最終的に幸運を呼び込み、37周目に導入されたSC時には、導入決定時にタイヤ交換作業を終えたばかりで、大きなタイムロスを防ぐことができた。

 そして9位で迎えた最終ラップでは、これまで耐えてきた可夢偉に幸運が舞い降りた。6位パストール・マルドナード(ウィリアムズ)が自らのミスでクラッシュし脱落、さらにペレスとニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)が接触して走行が困難な状態になり、一気に2台を抜き去った可夢偉が6位でチェッカーを受けた。

 レース前半から厳しい展開が続いた可夢偉。しかし、降りかかる苦難にも冷静に対応したことで、6位入賞をつかみ取った。

<了>

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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