堺ブレイザーズ、ファン獲得のための新たな試み=地域密着型クラブとしての挑戦(2)

市川忍

フェイスブックの公式ファンページを開設

堺はV・プレミアリーグ初のフェイスブックの公式ファンページを開設した 【スポーツナビ】

 前回、お伝えしたように、地域密着型スポーツクラブとして運営スタッフだけではなく、トップチームの選手も参加してファンを増やす策を講じている堺ブレイザーズには、2011−12シーズンのV・プレミアリーグ開幕に照準を合わせ、進めてきたプロジェクトがある。11年12月、V・プレミアリーグに所属するチームとしては初めてとなるfacebook(フェイスブック)の公式ファンページを開設したのだ。開幕後は毎試合、会場にカメラを入れ、すぐさま編集。試合の直後、ダイジェスト映像が見られる仕組みを作った。
 開設に至ったきっかけについてブレイザーズスポーツクラブの事業担当部長、清川健一は語る。

「もともと試合の動画を流したいというのは、僕がブレイザーズスポーツクラブに入社したころ、確か9年ほど前から思い描いていたことでした。というのも、Vリーグは地方開催が多く、ファンの皆様が毎回、試合に足を運ぼうと思えば莫大な旅費がかかります。会場に来られない人が多い中、そういう人にも試合の様子を見てほしいという思いからでした」

 フェイスブックを開設する前までは、オフィシャルホームページ上で映像を流していたが、その制作費と維持費を軽減するために清川が新しく目をつけたのが、専門的な知識がないクラブのスタッフにも簡単に動画をアップできるフェイスブックだった。そのほかの動画サイトも候補に挙げて1年以上、話し合いを続け、検討した結果、Vリーグ機構の規定も含め、さまざまな問題をクリアできる媒体がフェイスブックだったのである。

 こうして当初は会場に来られないファンのため、そしてサポーターズ会員の増加へつながれば、という思いで始めたフェイスブックだったが、ここへきて思わぬ効果を生んでいると清川は話す。フェイスブックのシステムには管理人だけが閲覧できる分析ソフトがある。どんな人が「いいね!」ボタンを押してくれるのか、どんな人が定期的に公式ファンページを訪問しているのかが如実に数字に現れるのだ。

「その分析によって公式ページを訪れるファンの中で少ない性別、年齢層が明らかになりました。そこで、その人たちに受けるのは何かという視点で企画を考え、動画を制作することにしました。直接的な効果は分かりませんが、その後、フェイスブックの分析結果を追ってみると、足りなかった層が徐々に増えています。こうして訪れる人を分析することで、ファンへのアプローチ策が1つ増えたことは、われわれにとって大きかったと思います」

挑戦し、失敗から学び、再び挑戦

 堺は現在、試合のダイジェストだけでなく、自分たちで制作した情報番組の動画も同じフェイスブック上にアップしている。07年に一度、自社で制作費用を負担し、ケーブルテレビ局を通じて放映したものの、その後、資金難によって休止していた番組『ブレイザーズTV』の進化版といったところだ。選手の生の声が聞けるということでファンにも好評である。

「とにかく新しいものにはすぐ食いつこう、そしてダメだったら吐き出そうというスタンスです」と清川は笑うが、設立から10年間、こうして挑戦し、失敗から学び、再び挑戦することでクラブは前に進んできた。『ブレイザーズTV』の復活は、その成長の証しの1つといっていいだろう。

 では今、堺にとって最も課題とされているファン獲得のための解決策は何なのだろうか。
「もしお金もうけにこだわるのであれば、入場料を高くすれば済む話ですが、それはクラブの理念と違います。泥臭く、こつこつと、自分たちの周りにいる“ちょっとバレーに興味を持っている人”に働き掛け、まずは試合を見てもらうことだと思っています。
 そのためにも、とにかく多くの人の目に触れることが重要だと考えています。フェイスブック、ツイッター、メールマガジン、ブログなど、いろいろな手段を使っているのはそのためです。こうして作られたコミュニティの中で、興味を持ち、会場に足を運んでくれる人を、たとえ1人ずつでもいいので増やしていきたい。国際大会でバレーボール人気に火かつくのを当てにせず、1つひとつ、地道に自分たちで積み上げていくしかないと思っています」(清川)

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著者プロフィール

フリーランスライター/「Number」(文藝春秋)、「Sportiva」(集英社)などで執筆。プロ野球、男子バレーボールを中心に活動中。

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