伏兵・山本が一気に飛躍 「やってきた練習に自信がある」=びわ湖毎日マラソン

中尾義理

勝負のレースで真骨頂を発揮

一般参加ながら日本人トップに入り、五輪代表に名乗りを上げた山本 【写真は共同】

 山本は今回が4度目のマラソン。初マラソンの2009年北海道でマークした2時間12分10秒が従来の自己最高で、ロンドン五輪戦線においては伏兵的存在だった。ただ佐川急便の中野剛監督も認める練習好き。月間走行距離は1200キロ以上。「やってきた練習には自信がある。準備してきたものを出せば狙えるかもしれない。やるからには本気でいこう」と挑戦的な心境でレースに臨んでいた。

 兵庫県神戸市出身。西神中と長田高で1500メートルを中心にスピードの土台をつくり、中大では箱根駅伝を経験。マラソン志向が高く、1996年アトランタ五輪代表の大家正喜らが力をつけた佐川急便で世界を目指すマラソンの脚と心をつくってきた。過去3度のマラソンのうち、2度は8月の北海道。「五輪や世界選手権は夏にあるから」というのがその理由。いつか真夏の舞台に立つことを自らに刷り込んでいたというわけだ。

「中本さんに一気に離されたわけではなかったので、まだチャンスはあると思っていました。本当に苦しいところから必死で追いかけられたのは、これまでのマラソンの失敗で我慢の仕方を学んだから。気持ちで引かないように走りました」と山本。

「地道な努力を積み重ねられるタイプ。練習でもペースダウンして終わることがほとんどない」(中野監督)という真骨頂を発揮して、五輪イヤーにブレークした。

藤原新、山本が確実 残る代表1枠の行方は?

 日本トップ争いに敗れたとはいえ、中本は2時間8分53秒の自己最高。続く森田知行(カネボウ)が2時間9分12秒、堀口が2時間9分16秒、林昌史(ヤクルト)が2時間9分55秒と、計5人がサブテン(2時間10分未満)を達成した。途中26〜30キロで先頭集団を沸かせた出岐の2時間10分2秒は“敢闘賞”。収穫があった一方、堀端は持ち味が発揮できず終盤に失速。注目された今井も26キロ付近から後退し、五輪の道が断たれた。

 これで男子マラソンのロンドン五輪代表選考レースは終了。東京の藤原、びわ湖の山本を外す理由はなく、残りは1枠。有力視されるのは、東京で日本人2位の前田、びわ湖で日本人2位の中本か。記録を単純比較すると、前田の方が中本より15秒速いが、前田は日本人3位となった福岡からの“追試”での好結果であり、中本は世界選手権10位という実績がある。福岡で日本人トップに入った川内優輝(埼玉陸協)は2時間9分57秒の記録と2度目の選考レースである東京で14位だったことを踏まえると、選出は厳しい。
 男女のマラソン代表は、11日の名古屋ウィメンズマラソンの翌日に発表される。

<了>

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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