女王・中部電力に挑んだ“新旧”チーム青森=女子カーリング、熾烈な日本代表争い

小川勝

4強の中心はいまだ常呂町

トリノ五輪で活躍した小笠原(後方右)と船山(後方左)が復帰。元チームメートの本橋(前方)らと接戦を演じた 【写真は共同】

 このように4強構造になった日本の女子カーリング界だが、選手の出身地域を見ると、まだまだ北海道のカーリング王国、北見市常呂町が中心をなしていることが分かる。

・中部電力のスキップ藤澤。
・ロコ・ソラーレ北見のスキップ本橋、サード吉田。
・チーム青森のセカンド近江谷杏奈。
・北海道銀行のスキップ小笠原、サード船山。

 この選手たちは、全員が常呂町の出身だ。24年前、日本で最初に屋内カーリング場を造った人口5000人の町が、今でも、トップ選手の供給源として機能しているわけだが、日本国内の競争レベルがさらに高まっていくには、本州で育ったスキップのチームが、ここに加わってくる必要があるのかも知れない。

ソチ五輪へは険しい道のり 代表チームはどうなる!?

 昨年11月のパシフィック選手権には、1年前の日本選手権で優勝した中部電力が日本代表として出場したが、4位に終わって、2位までに与えられる今年の世界選手権出場権を獲得できなかった。日本が2014年のソチ五輪に出場するには、今年11月のパシフィック選手権で、来年の世界選手権出場権を獲得することが最低条件となっている状況だ。

 今年の日本代表については、日本選手権優勝チーム=日本代表という従来の方式だけでなく、選抜チームの編成や、パシフィック選手権に向けて代表選考会をもう一度行うことなども検討されている。

 ただ、選抜チームが編成されるにしても、今回優勝した中部電力が中心になることは間違いなく、彼女たちが日本の軸をなしていくことは決定的だ。

 昨年のパシフィック選手権で敗れた時のことを、藤澤は次のように語っている。
「パシフィック選手権では、点を取られたあと、攻め急ぎ過ぎて、また取られてしまうというパターンが多かった。私のメンタル面の弱さが出た大会でした」
 大会後、サッカー日本代表の監督だった岡田武史氏の本を読むなどして、試合中のメンタル面の安定維持について学んだという。
「以前の私たちは、あまり、逆転で勝てるチームではなかったんですけど、今回は(北海道銀行戦、決勝のロコ・ソラーレ北見戦)逆転で勝つことができた」と、藤澤は手応えを感じている。
 サードで主将を兼任している市川は「パシフィック選手権で結果が出せず、申しわけない気持ちもあった。(2連覇を果たして)私たちが王者だと証明できてよかった」と語り、ソチ五輪に関しては「もちろん意識しています」と、日本代表への自覚が高まっていることを感じさせる。

国内競争の激化によるレベルアップが必須

 3年前まで、日本でカーリング中心の生活を送れるチームは、青森市のバックアップを受けて選手が地元企業に雇用されているチーム青森だけだった。それが現在では、中部電力、北海道銀行という企業チームが加わって、3チームに増えている。
 アジア地区では中国がバンクーバー五輪で銅メダルを獲得。代表チームのレベルは日本が追い抜かれた形になっているが、国内の競争が激化することによって、日本のレベルがまた上がっていく土台は築かれつつある。
 時間はかかるかも知れないが、まずは中部電力を、ほかの有力チームが追いかけることで、日本としてのレベルそのものを、上げていくしかない。

<了>

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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