錦織圭が示した驚異的なフィジカルの向上と“頭のスタミナ”=全豪で手にしたかけがえのない経験と確信
錦織が感じさせるその先への可能性
今大会の錦織は驚異的なフィジカルの向上を示し、さらなる可能性を感じさせた 【Getty Images】
2時間を走り切った体力と同時に、この試合で錦織が示したのは “頭のスタミナ”だ。テニスはすべてのポイントで「次はどこに打つべきか」を常に考え、相手の動きや心を読み、自身の気持ちを切らすことなく戦い続ける究極のメンタルスポーツでもある。
マレー戦の後半、さすがに錦織の脚力には若干の衰えが感じられたが、どこに打つべきか、何をすべきかという頭脳戦の面での疲労や混乱は見られなかった。08年の全米で、敗戦後に「体というより、頭が疲れていた」と疲労困憊(こんぱい)の表情を見せた面影は、まるでなかった。
「これまではフルセットを戦った次の日は動けないほど体が痛かったのに、今回はそんなことがない。自分でも驚くくらいで、これは自信になった」
マレー戦後に残したこの言葉に、負け惜しみも自身への過大評価もないはずだ。それは、今大会での錦織の戦いを見てきた者なら、誰もが感じたことである。
往年の大選手であるジョン・マッケンローや、マルチナ・ナブラチロワらをも魅了した、錦織の天性のセンス。その才能を燃やすには膨大なエネルギーを要したが、燃料タンクの許容量は急激に増えつつある。
ベスト8という高みに至ってなお、その先への可能性を大いに感じさせる全豪での戦いの終焉(しゅうえん)。
それが、何よりうれしい。
<了>