NFCチャンピオンシップの見どころ=NFL ニューヨーク・ジャイアンツvs.サンフランシスコ・49ers

NFL JAPAN/生沢浩

21年後の再戦は因縁の対決

ディビジョナル・プレイオフで逆転決勝TDをキャッチした49ersTEデービス 【AP Images/NFL JAPAN】

 この両チームがNFCのカンファレンス決勝で顔を合わせるのは1990年シーズン以来のこと。この試合は49ersファンには「ジョー・モンタナ(95年に引退)が壊された試合」として記憶されているかもしれない。この年にシーズンMVPだったモンタナは第4クォーターに右肘を負傷して退場し、49ersは13−15で敗れて3年連続スーパーボウル出場の夢を絶たれた。さらにこの負傷が原因でモンタナは91年シーズンを棒に振り、正クォーターバック(以下QB)の座はスティーブ・ヤング(99年に引退)へと移っていったのである。

 21年後の再戦は最も勢いに乗るチーム同士の対戦となった。49ersはディビジョナル・プレイオフ(以下DP)で戦前の予想を覆してニューオリンズ・セインツを破った。NFL入りしてから7年間、パスに安定感がないと批判され続けてきたQBアレックス・スミスだが、この試合では逆転となる最終ドライブで鍵となるパスを次々と成功し、タイトエンド(以下TE)バーノン・デービスへの決勝タッチダウン(以下TD)パスへとつないだ。チームがリーグを制するには重要な場面でキープレイを成功させるQBの存在が不可欠だが、スミスはその条件をクリアしたと言っていいだろう。デービスもTEとしてはプレイオフ史上最多となる180ヤードレシーブを記録し、心身ともに充実してホームでのカンファレンス決勝を迎えることができる。

 一方のジャイアンツは一時はプレイオフ出場さえ危ぶまれたが、レギュラーシーズン終盤を3勝1敗で乗り切って地区優勝。DPではトップシードのグリーンベイ・パッカーズに対しアップセットを演じて見せた。試合を追うごとにQBイーライ・マニングが成長し、チームが勢いに乗っていった2007年シーズンを彷彿(ほうふつ)とさせる快進撃である。マニングがQBとして成熟期に入った現在は余裕すら感じさせる戦いぶりだ。

ランとパス 対照的な攻撃の特長を持つ両チーム

 49ersはランニングバック(以下RB)フランク・ゴアのランでボールをコントロールし、要所でスミスがパスを決めるというタイプのオフェンスを得意とする。パス中心のオフェンスに比べて爆発的な得点力こそないが、その代わりに好不調の波も少ない。いろんなタイプのディフェンスに対してブレのない戦いができるのが特長だ。固いディフェンスとうまくかみ合って、堅実なフットボールを実戦している。

 ジャイアンツのオフェンスは対照的にマニングのパスが武器だ。TEジェイク・バラードとワイドレシーバー(以下WR)ビクター・クルーズの台頭やアキーム・ニックスの成長にも助けられて今季のマニングはパスでキャリアベストの成績を残した。特筆すべきは被インターセプトが16と昨季の25から大きく改善されたことだ。キャリアを積んだことでディフェンスに対する読みが深まり、判断力が高まった表れだろう。マニングのパスで点差を広げたらRBアーマド・ブラッドショーとブランドン・ジェイコブスのランで時間を使い切るというのが勝利の方程式だ。

パスラッシュ攻略の鍵となるゴアのラン

 ジャイアンツはシーズン終盤にディフェンスが大きく改善され、それが快進撃を支えている。特にディフェンスライン(以下DL)4人のパスラッシュは強力だ。ディフェンスエンド(以下DE)ジェイソン・ピエールポールはチームトップの16.5サックをマークし、オウシ・ウメニオーラが9回で続く。パッシングの場面ではピエールポール、ウメニオーラ、ジャスティン・タックのDE3人がそろい踏みする布陣をとることも多く、相手QBにプレッシャーをかける。

 このパスラッシュ(※守備側の選手がQBへプレッシャーをかけることを狙って突進すること)をいかに攻略するかが49ersのゲームプランの中心をなすだろう。鍵を握るのはゴアのランだ。ランが出ればジャイアンツのラッシュをスローダウンさせることが可能で、スミスのパスもセットアップしやすい。逆にランが止められてしまうと第3ダウンで常にラッシュを浴びながらパスターゲットを探すというプレッシャーにさらされることになる。

 両チームは02年のワイルドカード・プレイオフでも対戦し、その時は49ersが39−38で競り勝った。ともに攻守のバランスがとれ、勢いに乗るチーム同士なだけに今年の対戦もきん差で最後まで目が離せないシーソーゲームが展開されるだろう。

<了>
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