川崎宗則のユニークなMLB挑戦=メジャー昇格、レギュラー獲得の条件とは!?

丹羽政善

レギュラー争いのライバルたち

 簡単にマリナーズの内野の状況について触れると、ショートには昨季、地元記者の投票により、アンサングヒーロー(陰の功労者)に選ばれたブレンダン・ライアンがいる。二塁には、やはり地元記者の投票でMVPに選ばれたダスティン・アクリーがいて、2年目の彼が今後、チームを背負っていく存在であることも考えれば、川崎には争う余地はない。

 レギュラーとして食い込む余地があるとしたらサードということになるが、現時点では、ショーン・フィギンス、カイル・シーガー、アレックス・リディという3人のライバルがいて、契約的にはフィギンスが有利。まだ2年も契約が残り、チームとしては昨年からトレードを模索しているが、引き取り手がいないだけに、もう一度チャンスを与える可能性が高い。

 うまくフィギンスをトレードできたとしたら、シーガー、リディとの争いだが、リディはまだ、走攻守すべての面でメジャーのレベルではない。確かにフル出場すれば本塁打を20本程度は打てそうだが、打率は良くて2割3〜4分だろう。

 となると、シーガーとの一騎打ちとなるが、昨季途中でレギュラーに抜てきされた彼は、うまく行けば打率2割7〜8分は残せると見られている。守備は平凡だがマイナーでの実績は十分で、メジャーに昇格してもある程度のポテンシャルを示した。
 それを考えれば、キャンプで川崎が明確にシーガーよりも上であることを示す必要があり、短い期間でそれがどこまで可能か、ということになろう。

 もちろん、フィギンスが残留するなら、今度はシーガーと控え内野手の枠を争うことになる。シーガーの本職は二塁。昨季途中からショートの練習も始めており、役割が川崎と似ている。

キャンプで結果を出すことが重要

 正遊撃手ライアンの契約は2012年で切れるので、今回の契約はそのあとを見据えたものであるとも言えるが、2Aには、ニック・フランクリンという、マリナーズのマイナーではもっとも将来を嘱望された遊撃手がいて、3Aのショートにもカルロス・トライアンフェルという21歳のプロスペクトがいる。フランクリンの昇格は、早ければ2013年と言われているので、そういう考えかたも成り立ちにくい。

 こういう状況で川崎がレギュラーを獲得するとしたら、誰かがトレードされる必要があるが、そのためには川崎がメジャーで通用することを証明するのが先で、結局はキャンプで結果を出すことが前提となる。

 なお、川崎獲得に関して地元メディアの反応はおおむね好意的で、ある程度の実績を持っている日本人選手がマイナー契約でもいいなんて、冗談だろ? という見方もあった。

 また、イチローにも良い影響を与えるかもしれないという指摘もあり、川崎に対する期待は低くない。ただし、川崎が身を置こうとしている状況は、将来の戦力も含めて冷静に伝えており、そのあたりはドライである。

 いずれにしても川崎の、例を見ないユニークな挑戦が始まった。

<了>

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。

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