東洋大が大会新で完全優勝「今後更新されることはない記録」=箱根駅伝・総括

構成:スポーツナビ

全体的に“らしくなかった”駒大は2位

 2位の駒大に関しては、優勝した全日本大学駅伝(11月・愛知〜三重)までは順調でしたが、今大会は全体的に状態がよくなかったということでしょう。6区の区間記録保持者である千葉健太(3年)は故障上がりでしたから、同区間の山下りで思い切り突っ込むことができなかった。

 そして、8区・高瀬泰一(4年)は力のある選手なのに、並走していた明大の1年生・有村優樹に引っ張られているように見受けられました。さらに、7区の上野渉(3年)、10区の後藤田健介(3年)ともに、本来の走りではなかったですね。9区で窪田忍(2年)が一矢報いる区間賞の走りを見せたとはいえ、全体的に“らしくない”走りでした。

明大、青山学院大は確実につないで上位進出

 一方、3位に入った明大は、上位に来るとは思っていましたが、“穴”でしたね。エースの鎧坂哲哉(4年)は10区にエントリーされたので、往路・復路ともに彼がタイムを稼げるわけではありません。ですから、チームが結束し、鎧坂に負担をかけずに『自分たちが走らなければならない』という意識を強く持ったのでしょう。

 アンカーの鎧坂も無理せず自分のペースを守って走っていたら、早大が落ちてきて順位を上げることができた。西弘美監督も鎧坂は最後の箱根なので、本調子ではないけれども彼の気持ちを考えて10区にエントリーしたのだと思います。とはいえ、鎧坂に負担をかけずにメンバーが確実につないで、3番手に入ることができたのは、この上ない喜びだと思いますよ。

 そして、明大同様、選手たちが確実につないだ印象をもったのが、史上最高の5位に入った青山学院大。2区で出岐雄大(3年)が区間賞を獲得するなど、往路のいい流れを復路でも受け継いだのがよかったです。特に、6区の竹内一輝(2年)が、駅伝初出場ながら区間6位と粘りのある非常にいい走りを見せた。とにかく、全体的にまとまっていたので、走り込みなど練習をしっかりさせているんでしょうね。

順大と日体大、名門の明暗

 名門の順大は、箱根駅伝予選会(10月・東京)では最後の9番目に本選切符を手にしましたが、今大会では7位に入り、5年ぶりにシード権を獲得しました。仲村明監督からの信頼があり、裏のエース区間・9区に起用された松村優樹は、1年生ながらすごくよかった。前半、下りで突っ込んで、後半失速するパターンが多い中、最後までしっかりと走って区間5位に入りました。さすが“復路の順大”です。

 同じく名門の日体大の19位という結果は衝撃的でした。往路が終わった時点では11位とシード権を狙える位置にいましたが、6区で15位に順位を下げたのをきっかけに、流れを戻すこともなくずるずるといってしまった。無残としか言いようがないです。

<了>

■川嶋伸次 / Kawashima Shinji
1966年、東京都出身。日体大時代、箱根駅伝では山下りの6区を担当し区間賞を取るなどチームに貢献。卒業後は旭化成陸上部に入部し、各大会で活躍した。2000年の琵琶湖毎日マラソンで自己ベストとなる2時間9分04秒をマーク(日本人トップの2位)、シドニー五輪マラソン代表に選出された。その翌年に現役を引退、02年からは東洋大陸上競技部の監督に就任するが、08年12月、陸上部員の不祥事により引責辞任する。現在は旭化成陸上部コーチを務める傍ら、「リスタートランニングクラブ」のアドバイザーや各種講演会、マラソンのゲストランナーとして活躍している。09年8月には自叙伝『監督―挫折と栄光の箱根駅伝』(バジリコ刊)を出版。

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