新時代を迎えた高校サッカーに求められること=年間リーグの妙、選手権は群雄割拠の時代に

川端暁彦

「群雄割拠」の傾向はより顕著に

夏の覇者・桐蔭学園など有力校が予選で次々と敗れた今大会はまさしく群雄割拠の様相を呈している 【写真は共同】

 もう一つ、個人的に注目している「新しい時代におけるリーグ戦の使い方」としてあるのが、Bチームの活用だ。今年のプリンスリーグ関東の参入戦には、群馬県1部リーグを制した前橋育英のBチームが参戦していた。惜しくも敗れて参入はならなかったが、前橋育英はCチームが県2部リーグに、Dチームが県4部リーグにエントリーしている。こうした「複数チームの容認・奨励」も、第二次改革の目玉の一つだ。群馬は先進県で早くからこうした試みを認めていたわけだが、これは全都道府県に拡大している。ちなみに、プリンスリーグ東北2部では、青森県リーグを制した青森山田のBチームが来季からの参入を決めている。

 もちろんこうした試みには、反発の声もある。「前橋育英のような資金力、指導者の数がいるチームしかできないじゃないか」という声、要約すると「ずるい!」という声があるわけだ。その気持ちは分からないでもないが、長い目で日本サッカー界の発展、選手の成長を考えるなら、日本サッカー協会の方向性は、やはり正しいと思う。そして同じく長い目で見れば、Bチームも含めた新しい形でのリーグ戦をうまく「使いながら」選手を鍛えることのできた高校が勝ち残っていく時代が来るのではないだろうか。

 そんな過渡期の、新時代一歩手前の高校選手権。よく言われる「群雄割拠」の傾向は有力校の敗退が相次いだ今年、より顕著だ。正直に言って、予想しても当たる気がしない。「どの高校にも優勝のチャンスがある」とまではさすがに思わないが、「どの高校にも上位進出のチャンスがある」という意見には同意できる。今年の予選で死闘が相次いだように、実力差のないチーム同士のギリギリの攻防戦の連続を堪能できる大会になるだろう。

<了>

『季刊エルゴラ2011冬 エルゴラ・プリンチペ高校サッカー名鑑』

季刊エルゴラ2011冬 エルゴラ・プリンチペ高校サッカー名鑑 【エル・ゴラッソ】

 今年も高校サッカー選手権に合わせて、この雑誌を出させていただくことになりました。出場48校の完全名鑑を掲載しています。恒例となっている「日本代表の証言」シリーズでは東北高校出身の今野泰幸選手(FC東京)にご登場いただきました。無名選手として入学し、特待生に負けてたまるかと「Bチーム」で奮闘し、大きく飛躍することになった彼の話は、多くの示唆に富んでいると思います。
 久々の出場となった清水商業高校・大瀧雅良監督には、この時代について、「部活」そのものについて深い考察をしていただきました。尚志高校・仲村浩二監督には、震災からの激動の9カ月をあらためて振り返り、語っていただいています。その言葉は、重かったです。そして市立船橋高校・朝岡隆蔵監督には、若くして「名門」の看板を背負うことになったその実状と、ご自身の高校サッカー体験について熱く振り返っていただいています。
 また今年からの試みとして、「もう一つの高校サッカー選手権」であるJユースカップの特集も行いました。現在4強まで残っていますが、その4強チームの紹介、敗退チームの有望選手ガイドなどを掲載しています。

『季刊エルゴラ2011冬 エルゴラ・プリンチペ高校サッカー名鑑』

特別定価:680円
全国書店にて好評発売中!
680円(税込み)
A4変型/オールカラー/84ページ

主要コンテンツ

●出場48校完全名鑑

●今野泰幸(FC東京)インタビュー
「高校で培った折れない雑草魂」

●選手権の群像
白崎凌兵(山梨学院・清水エスパルス入団内定)
鈴木武蔵(桐生第一・アルビレックス新潟入団内定)
藤村慶太(盛岡商・ベガルタ仙台入団内定)
風間宏矢(清水商)
室屋成(青森山田)
和泉竜司(市立船橋)

●指導者インタビュー
大瀧雅良監督(清水商)
「だから高校サッカーの意味はある」

仲村浩二監督(尚志)
「サッカーファミリーは温かい」

朝岡隆蔵監督(市立船橋)
「市船の話をされるのがずっと嫌だった」

●夏の記憶 高校総体を振り返る

●敗退校の群星

●Jユースカップ特集
[ベスト4選手名鑑]
清水ユース、C大阪U−18、名古屋U−18、広島ユース

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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