酒井宏樹、誰も予想できなかった急成長=ブラジルが認めた柏の右サイドバック
レアンドロ・ドミンゲスの存在が転機に
クラブW杯のサントス戦ではネイマール(右)とマッチアップ。南米王者にも恐れることなく立ち向かい、果敢な仕掛けからチャンスを作り出した 【Getty Images】
「酒井に足りないのは自信だけ。それさえつかめばJ1でも十分にやれる」
北嶋秀朗も井原正巳ヘッドコーチも酒井をそう評していた。酒井が自信を深めた要因として何より大きかったのは、右サイドでコンビを組むレアンドロ・ドミンゲスの存在だろう。絶対にボールを奪われないこのクリエーティブなアタッカーは、敵のマークを引き付け、「ここで上がれ!」とオーバーラップを仕掛ける最高のタイミングを、実戦を通じて酒井にたたき込んでいった。
第10節の浦和レッズ戦では、試合開始から1分にも満たないうちに、得意の高速クロスで北嶋の先制ヘッドをアシスト。レアンドロとのコンビで、原口元気と宇賀神友弥のサイドを凌駕(りょうが)した。チームの首位浮上と、浦和という国内屈指のビッグクラブを下す勝利に大きく貢献したことで自信を深めた酒井は、まるでたがが外れたかのように、その後は自らのポテンシャルを開放し、大活躍を見せていく。
ここからは描いた上昇曲線に目を見張るばかりだった。年齢からしてU−22代表に呼ばれるのは当然だとしても、日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督の目にもとまり、10月にはA代表招集の声が掛かった。出場機会こそなかったものの、183センチというサイドバックとしては規格外の体格に加え、驚異的なスプリントとジャンプ力を兼備した身体能力の高さ、そしてあの高速クロスの切れ味が広く知れ渡ると、多くのメディアからは「内田篤人から日本代表の右サイドバックの座を奪うのは時間の問題ではないか」との高い評価を受けた。
近い将来、活躍の場は海外に移るだろう
試合後の記者会見の場では、ブラジルメディアから酒井に関する数多くの質問が、ムリシー・ラマーリョ監督に向けて投げ掛けられた。
「若い選手で、J1でのプレーは1年目だと聞いている。いろんなことを吸収して、将来は花咲く選手だと思う」
敵将は酒井のプレーに高い評価を与えた。サントスからのオファーは、ラマーリョ自らが酒井を気に入ったからだとも伝えられている。その点から推測しても、この言葉は決してリップサービスなどではなく、あらためて酒井の能力を認めた彼の本心だと受け取っていいのではないだろうか。
また、クラブW杯での活躍は世界へと発信され、そのことで酒井は世界のサッカー市場からも注目を集めるはずだ。今後はサントスだけでなく、欧州のクラブから声が掛かったとしても何ら不思議はない。
「まだまだレイソルで成長したいんで」
その言葉とともに、柏への残留をずいぶん前から表明していたが、近い将来、この若きサイドバックは海外のクラブへ、その活躍の場を移すことになるだろう。酒井のサクセスストーリーはまだ始まったばかりにすぎない。
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