“エース”の仕事をやり遂げた小林可夢偉=F1フル参戦2年目の軌跡

田口朋典

順風満帆だった序盤戦だが

“エース”の仕事をやり遂げ、チームに貢献した小林可夢偉 【Getty Images】

 昨年一気にF1界の風雲児として名を上げた可夢偉は、今季エースとしてザウバーで2年目のシーズンを戦った。序盤はまさに順風満帆と言えたが、第2戦マレーシアから、大雨で長時間の中断も2位を走行した第7戦カナダまで、6戦連続でポイントゲット。失格となった開幕戦のオーストラリアでも8位フィニッシュを飾っており、事実上7戦連続でポイント圏内でフィニッシュをしたことになる。

 こうした快進撃の過程で、可夢偉は佐藤琢磨が保持していた日本人F1ドライバーの獲得ポイント記録である「44ポイント」を更新するとともに、日本人F1ドライバーの連続入賞記録「4」も凌駕(りょうが)。最終的に可夢偉は自己の総獲得ポイントを「65」にまで伸ばすこととなった。シーズン前半の可夢偉は文字通り記録的な、“レコードブレイカー”としての活躍を見せた。

苦境から脱したラスト2戦の経験を来季へ

 その一方で今年の可夢偉は中盤戦でかなり苦しんだ。メキシコ人ルーキーのペレスに予選で破れ、決勝でもしばしばチームメイトの後塵を拝した。特に決勝でのペースに優れるペレスに対し、日本GPなどのように、可夢偉は予想外に水を空けられることもあった。しかも第11戦ハンガリーGPから第17戦インドGPまで7戦連続でノーポイント。もちろん、これは可夢偉自身のワースト記録だが、昨年よりも着実さを増したその一方で、今年の可夢偉は大きな壁にぶち当たったように見えた。

 だが、終盤2戦でペレスがノーポイントに終わったのとは逆に、可夢偉はアブダビ、ブラジルで3ポイントを獲得、トロ・ロッソとのランキング争いに勝つ原動力となった。チームにとって重要なこのランキング争いに、自らの手で決着をつけた可夢偉は、チームの期待通りの“エース”としての仕事をやり遂げたと言っていいだろう。

 このラスト2戦を踏まえて臨むオフ、そして来季。ザウバーで3年目を迎える可夢偉にとってこの2戦は、流れ、チーム内の雰囲気、自身のモチベーションすべてにおいてプラスに働くはず。今季苦しみを味わったからこそ、来季の可夢偉には期待できる。その兆しが、ラスト2戦だったと思いたい。あとは、ザウバーのニューマシンがさらに上位陣に肉薄できるだけのパフォーマンスを備えたものであることを祈るだけだ。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。大学卒業後、趣味で始めたレーシングカートにハマり、気がつけば「レーシングオン」誌を発行していたニューズ出版に転職。隔週刊時代のレーシングオン誌編集部時代にF1、ル・マン、各種ツーリングカーやフォーミュラレースを精力的に取材。2002年からはフリーとなり、国内外の4輪モータースポーツを眺めつつ、現在はレーシングオン誌、オートスポーツ誌、CG誌等に執筆中。自身のブログ“From the Paddock”(スポーツナビ+ブログで)では、モータースポーツ界の裏話などを披露している

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