槙野智章、理想と現実の狭間で揺れて=評価されない現状、渇望する出場機会

了戒美子

このまま埋もれていく人材ではない

「心の支え」と語る日本代表に継続して選出されるためにも、クラブでの出場機会をもっと増やす必要がある 【Bongarts/Getty Images】

「自分のこのチームでの立ち位置ははっきりしている。いろいろなことを考えていかなくてはいけないと思う」
 と、槙野は口にはする。何よりも、本人が「心の支え」という日本代表に招集され続けるためにも、クラブで出場機会を確保しなくてはならないことは重々承知している。

 それでも槙野としては、移籍を繰り返さずに1つのチームで勝負していきたいという願望のようなものがある。かつて、自分が生まれ育った広島の、クラブの生え抜きとしてチームを支えたような存在にケルンでなれればベストだというのが、第一希望だ。
「基本的に、移籍はしたくないんだよね」

 ただ、もうそうは言っていられない現実と向き合い始めた一面もある。
「一度、欧州の4大リーグ以外のリーグで勝負して、もう一度戻ってくるというのもありだとは思う」
 少なくとも、ケルンでいつまでもプレーすることが得策ではないという思いもある。また、その一方で少しずつチャンスをつかんでいった広島での1年目のように、途中出場から出場機会を得ていければという思いもある。

 今季唯一出場したハノーファー戦では、「少しの時間でも僕にとっては貴重」と話し、そつのない出来を見せてはいるが、その後の出場機会確保には今のところつながっていない。ケルンにとどまるのか、出場機会を求めた選択をするのか。思いは揺れている。
「2014年を、どう迎えるか。ただ選ばれるのではなく、そこで活躍したい。そこから逆算して、今年の海外移籍を選択した」
 そう言い続ける槙野は、どのように現状を打開していくのだろうか。このまま埋もれていく人材ではない。

<了>

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著者プロフィール

2004年、ライターとして本格的に活動開始。Jリーグだけでなく、育成年代から日本代表まで幅広く取材。09年はU−20ワールドカップに日本代表が出場できないため、連続取材記録が3大会で途絶えそうなのが気がかり。

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