シャルケの内田に何が起こっていたのか=シーズン序盤のつまずき、さらなる進化への一歩

了戒美子

昨シーズンからの変化

バイエルン戦でリベリー(左)と競り合う内田。コンディションも戻りつつあり、出場機会も増えてきた 【写真:アフロ】

 負けん気を全開にして現状を肯定する。弱気が見え隠れした過去とは違うところだ。
「今、この時間を無駄にしないようにと思って、スピードが落ちない程度に筋肉をつけたりもしている。生まれて初めてだよ、チーム練習以外で個人的に何かに取り組んでいるのは」

 これまでこだわりのなかった接触プレーでの強さも、ブンデスリーガで戦っている以上は、こだわらざるを得ないのだろう。もちろん、センスとスピードが売りの内田に強さが加われば、選手としてワンランク上がる。
「ユリアン(ドラクスラー)なんかと比べながらやってるんだけどね。おまえ筋肉ねーなーって言われながら」と、楽しそうでもある。

 また、昨季との大きな違いは、内田のチーム内での存在感である。昨季は主将だったノイアーをはじめ、選手たちからかわいがられる弟的な存在にすぎなかった。「ノイアーにはお世話になったし。(バイエルンへの移籍は)さみしいよー」などと話すほどだった。
 それが、今季は前述のように同僚を励ますこともある。また、ELグループリーグ初戦のステアウア・ブカレスト戦では、ラウルが悪質なファウルを受け、味方の多くが審判に食ってかかったシーンがあった。これまでであればどこ吹く風だった内田も、仲裁をしにそのもみ合いの間に入っている。

「ファルファンが熱くなっていたので止めないとと思って。基本、われ関せずなんだけど、人の性格が分かってきたんでね。こっちの人たち、止めないと本気で手を出しちゃうから。ホント練習中からケンカが始まっちゃうからね。日本人は別に止めなくても、そもそも口で言うだけなんだけど。でも、そんな中でおとなしい日本人であるおれがプレーできているのは幸せだよね」

 強気なコメントを連発しつつも、内心は穏やかではないだろう。それが選手というものだ。だが、出場機会から遠ざかっている間も、内田は日々進歩している。さらにチャンスをつかむ日は、そう遠くないうちにやってくるはずだ。

<了>

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著者プロフィール

2004年、ライターとして本格的に活動開始。Jリーグだけでなく、育成年代から日本代表まで幅広く取材。09年はU−20ワールドカップに日本代表が出場できないため、連続取材記録が3大会で途絶えそうなのが気がかり。

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