「ジャパンスタイル」で日本ラグビーの未来をつかめ=ラグビー日本代表はW杯でどう戦うべきか

加藤康博

2019年、W杯日本開催に向けての第一歩

ジャパンスタイルを「激しさ」と語る大野。勇気あふれるプレーでW杯に挑む 【写真:AP/アフロ】

 ラグビーのワールドカップが間もなく開幕する。日本代表はフランス、ニュージーランド、トンガ、カナダと予選プールで対戦、ここでの“2勝”を目標として掲げている。
 2010年のシックスネイションズ(ヨーロッパ6か国対抗戦)を全勝で制したフランス、今大会の優勝候補筆頭のホスト国、ニュージーランド相手に勝利を望むのは現実的ではない。トンガ、そしてカナダとの戦いで結果を求めることになるだろう。

 日本は過去、ワールドカップ6大会に出場し、1勝しか挙げていないが、この5年間、ジョン・カーワン(JK)体制のもと、かつてない時間を割いて強化を図ってきた。2019年のワールドカップ自国開催に向け、国内に日本ラグビーの存在を示し、8年後への勢いをつける意味でも絶対にこのライン(2勝)はクリアしなければならない。
 しかし、勝敗とは別の点でも、日本には求められているものがある。それはJKが常に口にしてきた「ジャパンスタイル」のラグビーを世界の強豪相手に実践できるかどうかだ。

「ジャパンスタイル」とは…!?

「ジャパンスタイル」とはタックルの低さ、プレイのはやさ、激しさ、そして正確さを旨としたラグビーのこと。守備では出足鋭くタックルを仕掛け、1人の選手に複数でタックルすることも厭わない組織的に粘る守備、そこから速いテンポでグラウンドを広く使ったワイドな攻撃へとつなげていくスタイルである。

 日本の存在を満天下に示す絶好の機会であるこのワールドカップで、「ジャパンスタイル」を実践することこそ、2019年に向けた日本の第一歩となる。それもニュージーランド、フランスといった世界のトップクラスの相手にも果敢に挑んでもらいたい。世界はこの2国にどう立ち向かうかによって、日本への評価を下すはずだ。

 2003年のオーストラリア大会では、フランス、スコットランド相手にヒザ下へのタックルを繰り返し、日本はどちらの試合でも中盤まで互角の戦いを見せた。結局勝利を手にすることはできなかったが、オーストラリアのファンやメディアはその戦いぶりに驚嘆し、敬意を込め日本代表を“ブレイブ・ブロッサムズ(勇敢なる桜の戦士たち)”と称した。このことからも世界の評価の仕方はうかがい知れる。そして5年かけた成果を大舞台で強豪相手に発揮できれば、2019年へ向けどう進むべきか、再度の検証が可能になり、新たな指針も見えてくるはずだ。

内容も問われる今大会 大野は「激しさを意識している」

 日本ラグビーフットボール協会は2010年3月にコーチングディレクターという新ポストを創設、中竹竜二前早大監督が就任した。これは2019年に向けた強化体制の一環としてコーチの発掘と育成を担当する役職である。
 中竹氏は「日本のラグビーは100年の歴史を持つが、これまでイングランドやニュージーランド、オーストラリアから技術を取り入れることばかりで、独自性を出す機会が少なかった。今は日本独自のスタイルを追求すべく、自分たちで考え抜くコーチングプログラムを開始している」と語る。今後8年間は日本代表を頂点とする一貫した指導体制が進み、「日本らしさ」がさらに深化していくだろう。そのベースを固める上でも今大会は勝利だけでなく、内容が問われてくる。

 今回代表に選出されたLO大野均はかつて「ジャパンスタイルとは?」という問いに対し、「ブレイクダウン(タックル後、攻守両チームによるボールの争奪戦のこと)の激しさを自分は意識している」と答えた。SH日和佐篤は8月のアメリカとの壮行試合において後半から出場し、小気味良いボールさばきでチームにテンポアップをもたらした。ワールドカップ本大会でもこうした局面に注目したいところだ。
 
 7度目となるワールドカップは、日本ラグビーの未来を左右する大きな意味を持つ。2勝という数字だけではない。内容にもこだわり、将来へつながるラグビーを見せてほしい。2019年大会で日本に桜を咲かせるための戦いはもう始まっている。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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